最終更新:2025年11月
作成日: 2006年1月12日


概要

20世紀モンゴル文学は、1921年の革命を契機として伝統的な口承文学から近代文学へと転換し、独自の発展を遂げた。社会主義リアリズムの影響下で成熟した作家たちは、モンゴルの自然、歴史、社会変革を主題とする作品を生み出した。しかし、1930年代後半のスターリン粛清により、多くの作家が弾圧され、文学活動は深刻な打撃を受けた。


近代文学の創設期(1920年代〜1930年代)

ダシドルジーン・ナツァグドルジ Дашдоржийн Нацагдорж

1906年11月17日〜1937年7月13日

モンゴル現代文学の父として広く認知される詩人、劇作家、ジャーナリスト。社会主義リアリズムの代表的作家として、愛国詩「我が祖国」(Minii nutag, 1933)でモンゴルの自然美を讃え、革命を主題とするオペラ「運命の三つの丘」(Учиртай гурван толгой, 1934)を発表した。

1921年にモンゴル革命青年同盟に参加し、革命後はダムディン・スフバートルの個人秘書を務め、1923年から1925年にかけて中央委員会書記などの政府要職を歴任した。1925年、19歳で政府職を離れレニングラードで学び、その後ベルリン大学のジャーナリズム学校とライプツィヒ大学でモンゴル学者エーリヒ・ヘーニッシュに師事した。

ドイツ滞在中に「ウランバートルからベルリンへ」(1926)、「遠い国への教育のために」(1927)などの詩を執筆し、帰国後はカール・マルクス『資本論』第一巻のモンゴル語翻訳、マルコ・ポーロの旅行記、エドガー・アラン・ポーの短編小説などの翻訳に従事した。

1932年5月17日、旧正月の祝賀中に「中傷的発言」をしたとして逮捕され投獄され、獄中で「自由への憧れ」などの詩を執筆した。1937年7月13日、31歳で死去した。

主要作品

  • 詩集:「我が祖国」(1933)、「歴史の詩」、「自由への憧れ」(1932、獄中作)
  • 戯曲:「運命の三つの丘」(1934)、「ウシャーンダル」
  • 小説:「ラマの涙」(Lambugain nulims)、散文詩「鳥のように速い灰色の馬」

文学史的意義
1929年にモンゴル作家同盟を創設し、モンゴル現代文学の基礎を築いた。伝統的な民謡の形式とリズムを取り入れながら、西洋近代文学の新しいジャンルと主題をモンゴル文学に導入した革新者である。


ソノムバルジリーン・ボヤンネメフ Сономбалжирийн Буяннэмэх

1902〜1937

ナツァグドルジ、ダムディンスレンと並ぶモンゴル近代文学の重要な先駆者として、1922年に戯曲「サンド総督」(Sando amban)または「近い未来の簡史」(Oirhi tsagiin tobch tuukh)を発表し、モンゴル現代劇の発展の出発点となった。

主要作品「暗黒の支配」(Харанхуй засаг)などで社会批判と革命思想を表現した。1937年から1939年の大粛清期に処刑され、その文学的遺産は長く抑圧された。

主要作品

  • 「暗黒の支配」(Харанхуй засаг)
  • 戯曲「サンド総督」(1922)

ビャムビーン・リンチン Бямбын Ринчин

1905〜1975

歴史小説家として知られ、三部作「夜明けの光」(Үүрийн туяа, 1950-1955)でマンチュー支配、神権政治、革命をテーマにモンゴルの近現代史を描いた。1937年から1939年の粛清期を生き延びた数少ない作家の一人として、戦後のモンゴル文学の発展に貢献した。

主要作品

  • 三部作「夜明けの光」(Үүрийн туяа, 1950-1955)

ツェンディーン・ダムディンスレン Цэндийн Дамдинсурэн

1908〜1986

ナツァグドルジ、ボヤンネメフと共にモンゴル近代文学の重要な先駆者として活躍した。1937年から1939年の粛清期に投獄されたものの、その後生き延び、戦後のモンゴル文学の発展に重要な役割を果たした。

1924年に記録物語「トルボ湖」(Tolbo nuur)を発表し、叙事ジャンルを継承発展させた。


粛清期の犠牲と復興(1930年代後半〜1940年代)

1930年代後半、多くの作家がスターリンの粛清によって処刑された。この時期、文学と芸術から多くの人々が犠牲となり、ボヤンネメフ、アユーシュ、シャグジが処刑され、ダムディンスレンとリンチンは投獄された。

1948年の第一回モンゴル作家会議がこの時期を批判し、文学の正常化を目指した。1940年代末から1950年代にかけて、モンゴル文学は徐々に回復し、新しい世代の作家が登場した。


戦後世代の作家(1940年代〜1970年代)

ドンロヴィーン・ナムダグ Донровын Намдаг

1911〜1982

革命初期から活躍した作家で、社会主義文学の発展に貢献した。1960年に歴史小説「時と権力の反乱」(Цаг төрийн үймээн)を発表し、モンゴル近代史を文学的に再構成した。


ツェデンドルジーン・ツェデンジャヴ Цэдэндоржийн Цэдэнжав

1913〜1983

戦後のモンゴル文学を代表する詩人・作家の一人。


ドンドギーン・ツェベクミド Дондогийн Цэбэгмид

1915〜1976

詩人、散文作家として活躍した。


ダシゼヴェギーン・センゲ Дашзэвэгийн Сэнгээ

1916〜1959

43歳で夭折した詩人。


チョイジャムツィーン・オイドブ Чойжамцын Ойдов

1917〜1963

46歳で逝去した作家。


チャドラーヴァリーン・ロドイダンバ Чадраавалын Лодойдамба

1917〜1978

1962年に「澄んだタミル川」(Tungalag Tamir)を発表した小説家。


エルデンバト・オユン Эрдэнбат Оюун

1918〜1993

作家、詩人として活躍した。


チョイジルジャヴィーン・ラムスレン Чойжилжавын Лхамсурэн

1919〜1979

60歳で逝去した作家。


バトトルガ З. Баттулаг

1919〜1996

戦後世代の作家。


ラマジャヴィーン・ワンガン Ламажавын Ванган

1920〜1968

48歳で逝去した作家。


ガンジミタヴィーン・ガーダンバ Ганжмитавын Гаадамба

1924〜1985

戦後を代表する作家の一人。


ツェヴェグミディーン・ガイタブ Цэвэгмидийн Гайтав

1929〜1979

50歳で逝去した作家。


ベグジーン・ヤボーホラン Бэгзийн Явуухулан

1929〜2017

長寿を全うした詩人・作家。


センギーン・エルデネ Сэнгийн Эрдэнэ

1929〜2012

1985年に「ザナバザル」を発表し、北モンゴル初の転生ラマについて描いた歴史小説家として知られ、革新的な短編小説も執筆した。

主要作品

  • 歴史小説「ザナバザル」(1985)

文学史的位置づけ

モンゴル現代文学は、革命期の理想主義、粛清期の弾圧、戦後の復興という激動の時代を経て発展した。ソ連との緊密な関係により、社会主義リアリズムが数十年にわたって支配的な文学様式となり、作家たちは制約の中で芸術性を追求した。

1989年の社会主義体制崩壊後、モンゴル文学は新たな自由を獲得し、多様なテーマと視点を探求する活性化の時期を迎えた。この新時代の文学は、複雑な歴史と文化的進化を国際的な読者に伝える役割を果たしている。


参考文献

  • “Mongolian Literature,” EBSCO Research Starters
  • “Dashdorjiin Natsagdorj,” Wikipedia
  • “Mongolian literature,” Britannica
  • Simon Wickhamsmith, “Politics and Literature in Mongolia 1921-1948”
  • “Periodization of Mongolian Literature in the 20th century,” Acta Mongolica