🎯 概要

モンゴル学の創始者ツェレン・ダムディンスレンが1957年に発表した、中央アジア最大の英雄叙事詩「ゲセル」に関する文献学的研究の金字塔。

ヨーロッパ学者による起源論を批判し、モンゴル・チベット双方の文献伝統を対等に扱った。

📖 詳細

ダムディンスレンが提唱した三つの根本的命題

  • 独自性: モンゴル語版・チベット語版はそれぞれが固有の文学的伝統と独自性を持ち、一方が他方の単なる模倣ではないことを論証した。
  • 民衆的性格: 叙事詩が単なる宮廷文学ではなく、抑圧された民衆の理想や解放への願いが反映された「民衆の叙事詩」であることを明らかにした。
  • 歴史的実在性: ゲセルが単なる神話上の存在ではなく、11世紀頃のチベット・モンゴル地域に実在した歴史的人物を原型としている可能性を実証的に検討した。

学術的意義

本研究は、ソビエト社会主義体制下で「封建的遺物」として批判の対象となりやすかった叙事詩に「民衆性」という価値を与えることで、モンゴルの伝統文化保護と学術的な脱植民地化を同時に達成した画期的業績である。