🎯 概要
明代に編纂されたモンゴル語・漢語対訳語彙集であり、「北虜」とは明朝が北方のモンゴル人を指した呼称である。639項目の語彙を天文・地理・人物など17門に体系的に分類し、16世紀の中期モンゴル語から現代モンゴル語への過渡期を記録する。軍事指南書『登壇必究』(万暦年間)や兵学書『武備志』(1621年)などに収録されて伝来した。
📖 詳細
言語学的特徴
語頭のh音が明確に保持され(hon, heliye, hüker等)、現代ハルハ方言でšとなる位置にsが現れるなど、中期モンゴル語の音韻的特徴を示す。動詞は完了形-ba/-beまたは現在未来形-namで記録され、現代語で中国語借用語に置き換わった固有語(borčoq「豆」、kemke「瓜」)が保持されている点も貴重である。
国際的研究
ハンガリーのアパトーツキーが全文索引付き校訂版(2009年、Brill刊)を刊行し、ロシアのルイキンが音韻転写原理の分析で1567-1603年頃の過渡的段階と年代推定を確立した。
現代での位置づけ
『華夷訳語』(1382年)と近代辞書との間を繋ぐ中期モンゴル語資料として、歴史音韻学研究に不可欠である。