🎯 概要
19世紀のポーランド系ロシア人東洋学者コワレフスキ(1801-1878)が編纂した全3巻・総2,690ページのモンゴル語・ロシア語・フランス語辞典である。1844-1849年にカザン大学から出版され、清朝の伝統的辞書の成果を吸収しつつ西洋の近代的辞書編纂法を初めて適用した画期的作品として、100年以上にわたり世界のモンゴル学者の標準参照文献として君臨した。
📖 詳細
編纂者の数奇な運命
コワレフスキはヴィリニュス大学の学生時代に政治活動でロシア当局に逮捕され、カザンへの追放処分を受けた。この「流刑」が転じてモンゴル学の道に進み、1828-1833年のブリヤート・モンゴル・北京への長期調査旅行で膨大な資料を収集。帰国後、欧州初のモンゴル語講座をカザン大学に開設した。本辞典はアルファベット順配列を採用し、仏教用語の記述が特に充実している。
現代への系譜
1960年のF.レッシング『モンゴル語大辞典』はコワレフスキ辞典を直接のモデルとしており、現代モンゴル学の礎石というべき存在である。刊行から180年近く経つ今も、レッシング辞典に未収録の古語や稀語の参照に不可欠であり、HathiTrust等で全文がオンライン公開されている。
現代での位置づけ
東洋の伝統的辞書と西洋のアルファベット順辞書を融合させた先駆的作品として、辞書編纂史における重要な転換点を示す文化遺産である。