🎯 概要

9世紀初頭にチベット帝国のラルパチェン王の勅命により編纂された、サンスクリット語・チベット語の対訳術語辞書であり、全277章・約9,500語を収録する。仏教経典翻訳における訳語の統一と標準化を目的とした「翻訳の憲法」であり、「今後すべての翻訳はこの辞書に従うべし」という勅令とともに制定された。18世紀には清朝乾隆帝の命によりモンゴル語訳が付加され、モンゴル語仏教用語の公定訳を確立する基盤となった。

📖 詳細

翻訳の標準化

アルファベット順ではなく仏教の世界観に基づく意味カテゴリー順(シソーラス形式)で配列される。仏・菩薩の名、四諦・八正道などの教理、因明(論理学)やサンスクリット文法の専門用語、さらに動植物・身体部位・員数の日常語彙まで網羅する。チベット語は「サンスクリット語を正確に復元できる」ほど精密な翻訳言語となった。

モンゴル語への継承

18世紀、チャンキャ・ロルペードルジェがモンゴル語訳を付加し『四体合璧翻訳名義集』を編纂。その解説書『知恵の源』では、サンスクリット*Dharma*を文脈に応じて*nom*(経典)、*törö*(理法)、*činar*(性質)と訳し分ける基準が示され、モンゴル語が高度な哲学言語として成熟する決定的転機となった。

現代での位置づけ

王権による術語標準化の最初期の事例であり、現代の翻訳研究・用語管理の歴史的先例として再評価されている。