🎯 概要
1768年(英祖44年)に李氏朝鮮の通訳官養成機関・司訳院(サヨグォン)が編纂した中国語・韓国語・モンゴル語の三言語対訳辞書である。約5,300語を収録し、最大の特徴はモンゴル語の発音が「ハングル」で精密に転写されている点にある。表音文字ハングルによる音写は、18世紀のモンゴル語口語の実際の発音を記録しており、中期モンゴル語から現代モンゴル語への移行を検証する音韻史的「ミッシングリンク」として極めて高い学術的価値を持つ。
📖 詳細
内容と構成
語彙は天文、時令、地理、田農、米穀、菜蔬など合計54門に意味分野別で分類され、上下2巻と補編から成る。各見出しは漢字(中国語)、ハングル(韓国語訳と中国語発音)、モンゴル文字、ハングル(モンゴル語発音転写)の四層で構成される。モンゴル語特有の音を表現するために、ハングルに特殊な圏点を付加する工夫がなされている。
朝鮮の外国語教育体制
『蒙語老乞大』(会話教科書)、『捷解蒙語』(文法入門書)と共に「蒙学三書」と称され、司訳院での体系的なモンゴル語教育カリキュラムの一翼を担った。1636年の丙子胡乱以降の対清外交において、実務的な言語能力の維持が国家的課題であった背景を反映している。
現代での位置づけ
完本は2部のみ現存(ソウル大学校規章閣本、東京外国語大学本)するが、デジタル公開が進んでいる。漢字音写の『華夷訳語』、満洲文字転写の『五体清文鑑』とは異なる表音体系による記録として、モンゴル語音韻史研究に不可欠な資料である。