🎯 概要

1835年にサンクトペテルブルクで刊行された西洋初の科学的モンゴル語辞典である。編纂者シュミット(1779-1847)はアムステルダム生まれのモラヴィア兄弟団宣教師で、南ロシア草原のカルムイク人への伝道を通じてモンゴル語を習得し、ロシア科学アカデミー会員となった人物である。全613ページの三言語辞典(モンゴル語・ドイツ語・ロシア語)は、1831年の『モンゴル語文法』とセットで、西洋モンゴル学の基礎を確立した。

📖 詳細

宣教師から学者へ

1804-1806年のカルムイク(西モンゴル系遊牧民)への旅でオイラト方言を習得し、その後ブリヤート人の協力で古典モンゴル語を学んだ。1829年のサガン・セチェン『蒙古源流』ドイツ語訳でモンゴル史研究に画期をもたらし、1843年のチベット仏教文学翻訳まで幅広い業績を残した。辞典には仏教用語・歴史用語・民族誌情報が豊富に含まれ、サンスクリット語・チベット語の原語との対応も記される。

学術的系譜

コワレフスキ辞典(1844-49年)、ゴルストゥンスキー辞典(1893-95年)、レッシング辞典(1960年)へと続くモンゴル語辞書学の出発点である。2009年にはBrill社から復刻版が刊行された。20世紀の新造語を含まないため、19世紀以前のモンゴル語の純粋な姿を伝える唯一の西洋語辞典として今も参照される。

現代での位置づけ

宣教活動から生まれた学術的営為の典型であり、現代モンゴル学の「創世記」として辞書編纂史上の記念碑的存在である。