🎯 概要
モンゴル語で書かれた最古の文学作品であり、モンゴル民族の起源、チンギス・ハーンの生涯と征服事業、オゴデイ・ハーンの治世の一部を記録した歴史書である。モンゴル帝国の歴史を内側から描いた唯一無二の史料として、世界的に高く評価されている。
📖 詳細
成立と構成
著者不詳。本文末尾に「鼠年(Year of the Rat)」にケルレン川のホドエ・アラルで完成したと記されている。この鼠年がいつを指すかについては学術的論争があり、一般的にはオゴデイ・ハーンが即位した1228年とされるが、内容の記述範囲から1240年、1252年、あるいはそれ以降とする説も根強い。全282章から成り、チンギス・ハーンの神話的祖先から始まり、彼の誕生、苦難の少年時代、モンゴル諸部族の統一、1206年の大ハーン即位、ユーラシア征服、そして死後のオゴデイ・ハーンの治世までを詳細に記録している。
保存と伝承
原典のウイグル式モンゴル文字写本は失われたが、15世紀の明代に作成された漢字音写本(モンゴル語の発音を漢字で転写し、中国語訳を付したもの)が現存する。12巻本と15巻本があり、12巻本は中期モンゴル語研究において特に貴重である。また、17世紀の『アルタン・トプチ』に約3分の2が引用されている。
内容の特徴
民間伝承、系譜、宗教詩、諺、劇的な対話、法典など多様な文体を含む。12~13世紀のモンゴル部族社会の日常生活、遊牧文明の組織、言語、文学、民族誌に関する豊富な情報を提供する。他の中世史料と異なり、モンゴル人自身の視点から書かれた点が最大の特徴である。
世界的評価
40以上の言語に翻訳され、世界文学の古典として認められている。モンゴル語史、中央アジア史、世界史研究において不可欠な基本史料である。