🎯 概要

地球上に残された最後の「真の野生馬」であり、モンゴル語で「精霊」を意味する「タヒ」の名で呼ばれる。一度は野生下で絶滅したが、国際的な保全努力とモンゴルへの再導入プログラムにより、奇跡的な復活を遂げた保全生物学の象徴的成功例である。

📖 詳細

生物学的特徴

家畜馬とは異なる独立した種(Equus ferus przewalskii)で、染色体数が異なる(タヒ:66本、家畜馬:64本)。

  • 体格: ずんぐりとした体型、大きな頭部、短い直立したたてがみ(家畜馬のように垂れない)。
  • 毛色: 黄褐色(ダン色)、腹部は白っぽく、脚には縞模様がある。冬毛は長く密で、零下40度にも耐える。
  • 行動: 1頭の牡馬と複数の牝馬・仔馬で構成される「ハレム群」を形成する。

絶滅と復活

  • 1969年: モンゴルのゴビ地方で最後の野生個体が目撃された後、野生下では絶滅。
  • 創始個体群: 世界の動物園に残された、わずか13頭を祖先とする繁殖プログラムが開始された。
  • 1992年: ヨーロッパの動物園から最初の16頭がホスタイ国立公園に空輸され、再導入が始まった。
  • 現在: モンゴル国内3箇所(ホスタイ国立公園、ゴビB地区、ホミン・タル)に約1000頭が野生で生息。IUCNレッドリストのステータスは「野生絶滅」→「絶滅危惧IA類」→「絶滅危惧IB類」へと改善された。

保全上の課題

遺伝的多様性の低さ(ボトルネック効果)、気候変動による草原の乾燥化、家畜との競合が依然として課題である。動物園からの個体追加導入や、地域住民との協力体制の構築が進められている。

現代での位置づけ

タヒはモンゴルの国家的シンボルであり、切手やポスターに頻繁に描かれる。ホスタイ国立公園はエコツーリズムの成功例としても注目されている。タヒの復活は、「人間が破壊したものを人間が修復できる」という保全の希望の物語として、世界中で語り継がれている。