🎯 概要

光緒17年(1891年)に清朝理藩院が刊行した全17冊のモンゴル語・漢語・満洲語三言語対訳辞典である。清朝勅撰辞書シリーズの中で唯一、モンゴル語を第一言語に据えた構成が特徴であり、理藩院官僚によるモンゴル王公との外交交渉やモンゴル文書の翻訳に特化した実務辞書である。同年、日本の郁文堂が復刻版を刊行しており、日清戦争(1894-95年)直前の対清情報収集の文脈で重視されたことがわかる。

📖 詳細

理藩院の実務

理藩院(1638年設立)はモンゴル・チベット・新疆行政を管轄する中央官庁であり、三言語能力(満洲語・モンゴル語・漢語)を持つ官僚を養成する必要があった。本辞典はその教材兼参照資料として編纂された。原撰者の賽尚阿はモンゴル系清朝官僚である。

現存状況

東洋文庫(東京)に郁文堂復刻版が所蔵され、2007年東京古典会オークションに出品された際、稀覯本としての価値が再確認された。

現代での位置づけ

清末の辺境統治における言語実践と、明治期日本の大陸研究の接点を示す二重の歴史的証拠である。