🎯 概要

清朝乾隆帝の勅命により18世紀末(1790年代頃)に編纂された、満洲語・チベット語・モンゴル語・ウイグル語・漢語の5言語対訳辞書であり、全36巻・約18,671語を収録する。清朝が版図拡大に伴い満洲・モンゴル・漢の「三体」にチベットと新疆を加えた「五族」を統合する普遍的君主のイデオロギーを具現化した、前近代アジア最大級の多言語辞典である。

📖 詳細

構成と特色

各ページは5言語が上から満洲語(筆頭見出し語)、チベット語、モンゴル語、ウイグル語、漢語の順に配置される。特筆すべきはチベット語とウイグル語に満洲文字による精密な発音転写が付されている点であり、特殊な圏点(diacritics)を開発してまで正確な音写を追求した。語彙は36部(天文・地理・政事ほか)に分類され、世界を構成する概念が階層的に整理されている。

清文鑑シリーズの到達点

1708年の満洲語単一辞典『御製清文鑑』に始まり、満蒙合璧、増訂版、四体版を経て五体版に至る編纂史は、清朝の領土拡大と完全に同期する。1759年の新疆征服後にウイグル語が追加され、最終形として完成した。1966年の京都大学版『五体清文鑑訳解』は全語彙にローマ字転写と日本語訳を付した記念碑的業績であり、現在も決定的な参照資料である。

現代での位置づけ

単なる辞書を超え、清朝の「大一統」思想と多言語支配の政治的シンボルとして研究されている。ドイツの電子化プロジェクトにより5言語間の網羅的比較が可能になりつつある。