自分の結婚式の準備を始めたら、実にいろいろな人と連絡をとらなければならなくなった。レストランを会場として利用して、しかも招待客にお祝儀などの負担をかけないようにと会費制にしたので、まるっきり最初からすべてのセッティングをやらなければならない。

いざ準備を始めてみたら、予想をはるかに上回る膨大な手間がかかった。通常のブライダル業者に対して支払う金額は決して安くはないが、あれは人件費と手数料のカタマリなのだと思い知った。業者にすべてを任せてしまってパックでやってもらう場合の、ざっと見積もって約20倍の手間と時間をかかると思ったほうがいい。

もし身の回りの誰かが「レストラン・ウエディングをやりたい」と言いだしたら、私ならとりあえず猛反対すると思う。レストラン・ウエディングや会費制に興味があるという人は、よっぽど身近に世話好きな人がいるか自己負担額を大幅に増やしてもいいというのでない限り、「レストラン・ウエディング」か「会費制」か、どっちかだけにしておいたほうが無難である。「海外旅行はパック旅行」という人も、絶対やめた方がいい。挙式や披露宴は専門の会場かホテルでやるに留めて、せいぜい二次会でレストランを利用するぐらいにとどめるのが無難だ。

準備の最初の段階では物理的に忙しいだけだが、終盤に近づくにつれてレストランとの打ち合わせや招待客との連絡だけでなく、花屋との打合せ、会場用音響レンタル業者との打合せ、撮影機器のレンタル注文、引き出物の購入注文、ラッピング資材の購入、挙式関係の祭祀者との打ち合わせ・・・などと際限なく続く。

しかも、誰と誰に何がどこまで伝わっていて、さらにそのどこまで伝わっているかを誰が把握しているかということまで、逐一を確認しておかなければならない。単に気力や労力というより、むしろ記憶力と注意力の限界である。

最初は、いかに忙しいかを力説しても、溺れかかっている者を見ても水泳の練習に励んでいるぐらいにしか感じないのか、手伝わないことを単に「非難」されているようにしか感じないのか、孤立無援の状態であった。人間の想像力には限界があるから、しかたあるまい。

それでも、ぽつりぽつりと救いの手は現れた。挙式(正確には法要)のためのパンフレットも、親切にもむこうで作ってもらえることになった。さらにレストランも、会場機材のレンタル業者への値引き交渉をしてみてくれるという。撮影を引き受けてくれる人、受付や司会を引き受けてくれる人、来日するモンゴルの友人のためにお土産を見繕っておいてくれるという人まで現れた。感謝である。