「モンゴル人の味覚」の記事はまだまだ続くのだが、ひとまず置いておいて、先に作り方について触れることにする。まずは、道具について説明しよう。
モンゴル料理は小麦粉の生地を使うことが多いので、のし棒とのし板を頻繁に用いる。モンゴルでは多くの家庭で、まな板とのし板を兼ねた大きな木製の板を使用している。日本ではのし板は最近あまり見かけなくなったが、大きなスーパーなどで探せば手に入るだろう。シート状のものが売られていることが多いが、あまりお勧めはできない。理想的には木製だが、石製でもよいだろう。のし棒は日本でも売っているようなやや長めのものである。百円ショップで短いのし棒が売られているのを見かけたこともあるが、麺類を作ることを考えるとやや不便ではある。
もし本格的に作ろうとするなら、のし棒とのし板を揃えることをお勧めする。といっても、別に他のもので代用しても差し支えない。ビールの空き瓶やラップの芯をのし棒代わりにすることもできるし、大き目のまな板ならばのし板の代用になる。
包丁は特にこだわらなくてもよいだろう。ぺディー・ナイフのようなものを使うモンゴル人もいれば、中華包丁のようなものを使う人もいる。日本で作る分には、普通に家庭にある包丁で十分である。
鍋類としては、蒸し器があれば便利だが、もし無かったら鍋の底に水をはって茶碗などを置き、その上に皿を乗せて蒸すという方法もある。昔、私が始めてモンゴル料理に挑戦したときは、ちょうど手ごろな蒸し器がなかったので工夫して、この方法でボーズを蒸したものである。蒸し器を使うときには、蒸し板の部分にサラダ油などの油を塗っておくのがポイントである。この他、バンシや汁物、モンゴル茶を作るためにはやや大き目の鍋、揚げ物や炒め物用にはフライパンを使用する。これらは普通の家庭で使っているものでかまわない。
ちなみにモンゴルの遊牧地域では5リットルや10リットルも入るような巨大な半球状の鉄製の鍋が用いられている。これを竈にくべて使用し、煮物、蒸し物、揚げ物、炒め物のすべてをまかなう。蒸し物を作るときには、鍋に蒸し板を入れて蓋をして蒸すのである。乳製品の加工にも、もちろんこの鍋を使う。