モンゴル語には、ある単語を2回続け、しかも後の方の単語の子音をmにすることで、「それに類する物」という意味を表すことができるという文法規則がある。モンゴル語をやっている方は、「ああ、あれかぁ」と思われるだろうが、知らない人のために例を挙げておこう。

аяга (アヤガ)=お茶碗
аяга маяга (アヤガ・マヤガ)=食器類

хувцас (ホプツァス)=衣服
хувцас мувцас (ホプツァス・モプツァス)=衣類

つまり、お茶碗の意味を表すアヤガという語に、語等の子音をmにしたマヤガをつなげると、お茶碗に類する物という意味になる。同様にして、衣服という意味を表すホプツァスという語に、語頭の子音をmにしたモプツァスをつなげると、衣類という意味を表すことができる。こういった現象を言語学的な用語で何と呼ぶのか知らないが、とにかく非常に生産的な用法であり、様々な単語にこれを応用することができる。

この知識が頭にあると、ついつい「ほっともっと」などという店名を見てもモンゴル語を思い出してしまう。「ほっともっと」とは、ほか弁でおなじみのフランチャイズ店「ほっかほっか亭」だった店舗のうち一部が、経営の事情で分裂して独自の店名を称するようになったものだ。

ちょっと考えてみると、他にもお菓子メーカーにヨック・モック(YOKU MOKU)なんて会社もあったし、練馬区にはnukumukuという名前の小さなパン屋さんもある。ではいったい、ヨックとはなんぞや、nukuとはなんぞやと言われても困るのだが、こういう音声的な言語感覚は日本人も少なからず持っているのではないかと言ってみたかっただけの話だ。