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Month: August 2008

モンゴル軍の携行糧食

モンゴルの軍隊で食べている携行糧食について、詳しく紹介したページがある。モンゴルの食料事情を知る上で参考になるだろう。http://10.studio-web.net/~phototec/ration/mongol.htm モンゴルの伝統食品であるボルツ、アーロール、エーツギー、ボールツァグなどの他、缶詰やレトルト食品、インスタント食品なども写真入りで紹介されている。

モンゴル料理の作り方(3)

まず、ビトゥー・ホールの作り方を説明する。ビトゥー・ホールとは小麦粉の生地でひき肉の具を包んだ詰め物料理のことである。主にボーズ、ホーショール、バンシを指す。ボーズとは小包籠のようなもので、蒸して作る。ホーショールは平たく作り、油で揚げるかフライパンに多目の油をひいて焼いて作る。バンシは水餃子のことで、ゆでて作る。 これらの料理の作り方に共通していえることは、小麦粉とひき肉は同量を目安にするということだ。例えば小麦粉が300gならば肉も300g、小麦粉が500gならば肉は500gで作るとよい。もっもと、経験豊富なモンゴル人の主婦であっても包んでいるうちに小麦粉生地が余ったり、逆にひき肉の具が余ったりすることもあるので、あまり神経質に考えなくてもよい。 小麦粉の量は1人分あたり150gを目安にすればよいだろう。肉の量も同量ということだが、日本のスーパーでは256gとか342gとか、半端な量がパック詰めして売られているので、その辺は適宜加減しなければならない。スーパーで「羊肉を300gひき肉にしてください」などと頼めば一番手っ取り早い。その場で挽いてもらうなら、できればやや粗挽きにしてもらうとよい。 小麦粉の生地の作り方を説明する。まず、ポットのお湯に水を足してぬるま湯を用意する。目安としては、300gの小麦粉ならばぬるま湯の量は180ccほどだが、様子をみて加減して、耳たぶ程度の固さになるように作る。小麦粉にぬるま湯を少しずつ入れていって、ちょっとぼそぼそになったところでそれを捏ね続けていくととちょうどよい固さになる。 ひとまとまりになった生地はボールを裏返しにするか濡れ布巾をかけて乾かないようにして、30分ぐらい寝かせておく。この後で両手を使って力を入れてよく捏ねる。 肉は、もし固まり肉のままだったら自分で細かく切ってひき肉にする。半解凍ぐらいの固さにして切ると切りやすい。そこに玉ねぎのみじん切りを入れて塩こしょうで味付けする。玉ねぎの量は日本人の感覚からするとびっくりするほど少量だ。300g~500gだったら、中サイズの玉ねぎ半個ほどでよい。1kgの肉に半個しか入れないモンゴル人もいる。 先日、自分でバンシを作ってみた際、肉を自分で切るところから始まって、バンシが茹で上がるまでの所要時間は1時間半だった。モンゴル人が作ってもこれぐらいの時間はかかるだろう。

モンゴル料理の作り方(2)

モンゴル料理の作り方は、英語のページだが、以下のサイトがお勧めである。このブログの読者の中には英語よりドイツ語に堪能な方もいらっしゃるようだが、同サイトのドイツ語ページをご覧になるとよいだろう。http://www.mongolfood.info/en/ 主なモンゴル料理が、ほぼ網羅的に途中の作り方の写真入りで紹介されている。特に生地の扱い方など、文章だけではなかなか分かりづらい部分もあるので必見だ。 小麦粉は、日本に暮らしているモンゴル人の中には薄力粉と強力粉を混ぜて中力粉にして使う人もいるようだが、薄力粉だけでも特に差し支えない。ちなみに、モンゴルでは小麦粉に等級があって、精白の度合いが強い順に特等、一等、二等として区別されている。二等は日本でいうところのいわゆる全粒粉で、精白の度合いが弱く、茶色っぽい色をしている。以前は二等の小麦粉は人気がなかったが、最近では栄養面で優れている、味がよいなどと人気が出始めているという。小麦粉は10kg単位の布袋に入れて売られることが多いが、量り売りもしている。 肉は、どのモンゴル料理でも羊肉を使うことが多い。理想的にはマトンだが、手に入らなかったらラム、それも無理だったら牛肉でもよい。懐具合によっては合いびき肉でもかまわない。 羊肉のひき肉の入手先だが、もし近所のスーパーで羊肉を置いているならば、奥でお肉の加工をやっている係の人に声をかけ、ひき肉に挽いてもらうという手もある。ただ、店内でひき肉を作っていないお店の場合、ミンチ器がないのでやってもらえないようだ。 あるいは、多少送料はかかるが、もし大量に作るのならネットで購入してもよいだろう。例えば下記サイトの「冷凍食品」のページなどでもマトンのひき肉が売られている。ただし、ハラール食品のお店の場合、当然のことながらハラール・ミートでと殺の方法が異なるため、味わいは本場モンゴルのものとはやや異なる。一般の精肉専門サイトから取り寄せてもいいだろう。http://www.kobegrocers.com/http://www.gourmet-meat.com/

モンゴル料理の作り方(1)

「モンゴル人の味覚」の記事はまだまだ続くのだが、ひとまず置いておいて、先に作り方について触れることにする。まずは、道具について説明しよう。 モンゴル料理は小麦粉の生地を使うことが多いので、のし棒とのし板を頻繁に用いる。モンゴルでは多くの家庭で、まな板とのし板を兼ねた大きな木製の板を使用している。日本ではのし板は最近あまり見かけなくなったが、大きなスーパーなどで探せば手に入るだろう。シート状のものが売られていることが多いが、あまりお勧めはできない。理想的には木製だが、石製でもよいだろう。のし棒は日本でも売っているようなやや長めのものである。百円ショップで短いのし棒が売られているのを見かけたこともあるが、麺類を作ることを考えるとやや不便ではある。 もし本格的に作ろうとするなら、のし棒とのし板を揃えることをお勧めする。といっても、別に他のもので代用しても差し支えない。ビールの空き瓶やラップの芯をのし棒代わりにすることもできるし、大き目のまな板ならばのし板の代用になる。 包丁は特にこだわらなくてもよいだろう。ぺディー・ナイフのようなものを使うモンゴル人もいれば、中華包丁のようなものを使う人もいる。日本で作る分には、普通に家庭にある包丁で十分である。 鍋類としては、蒸し器があれば便利だが、もし無かったら鍋の底に水をはって茶碗などを置き、その上に皿を乗せて蒸すという方法もある。昔、私が始めてモンゴル料理に挑戦したときは、ちょうど手ごろな蒸し器がなかったので工夫して、この方法でボーズを蒸したものである。蒸し器を使うときには、蒸し板の部分にサラダ油などの油を塗っておくのがポイントである。この他、バンシや汁物、モンゴル茶を作るためにはやや大き目の鍋、揚げ物や炒め物用にはフライパンを使用する。これらは普通の家庭で使っているものでかまわない。 ちなみにモンゴルの遊牧地域では5リットルや10リットルも入るような巨大な半球状の鉄製の鍋が用いられている。これを竈にくべて使用し、煮物、蒸し物、揚げ物、炒め物のすべてをまかなう。蒸し物を作るときには、鍋に蒸し板を入れて蓋をして蒸すのである。乳製品の加工にも、もちろんこの鍋を使う。

モンゴル料理の素

モンゴルの友人が滞在中に、しばしばモンゴル料理の味付けが単調だということが話題になった。彼女はなかなかの親日家で、モンゴルに住んでいる日本人ともわりと交流があるらしいのだが、モンゴル料理の作り方を聞かれることがままあるという。一通りの作り方を説明するものの、味付けについて、ただ「塩を入れる」と教えると、「それから?」と聞き返されて答えに窮してしまうというのだ。日常的に利用されている調味料は、塩とこしょうぐらいなのだから仕方がない。良くいえば素材の持ち味を生かして料理するということだが、とにかくスパイス類の強い味と香りには慣れていないのである。 ところが、そんなモンゴル料理にも最近では変化が訪れようとしている。インスタント調味料の出現である。 「最近ではモンゴルではボーズ用の調味料っていうのが売られているのよ。」と彼女は言った。一瞬私は耳を疑って、「うっそ~!ボーズってただ塩を入れるだけじゃないの」「ホント、ホント。ボーズだけじゃなくて、ホーショール用とか、バンシ用とか、いろんな料理用の調味料が売られてるんだから」という会話が交わされた。しかも、それを入れて作ると、お料理がとってもおいしくなると評判なのだそうだ。 モンゴル人にとっての料理がおいしくなる調味料とは、いったいどんなものだろうか。当然のことながら興味を持った私は、帰国してから郵便で送ってもらうように頼んでおいた。 先日、その例の「モンゴル料理の素」が届いた。ホーショールの素、バンシの素、ボダータイ・ホールガの素、ツォイバンの素、ゴリルタイ・シュルの素の計5種類が3袋ずつ入っていた。なぜかボーズの素は入っていなかったが、たまたま品切れでもしていたのだろう。 なるほど、とにかくこれはすごい。せっかくだから、私一人だけで楽しむのはもったいないので、つい最近ネット上で知り合いになった「Foods of the world」というサイトの管理人をしている方に1袋ずつをおすそ分けさせていただいた。http://www.geocities.jp/foodsoftheworld/index.html 外国の「料理の素」を専門にあつかったホームページで、国ごとのインスタント調味料の写真とそのメーカー名や作り方の解説、原材料名、実際に作ってみた料理の写真などが載せられている。嬉しいことに、すでにモンゴルのページでホーショールの作り方も紹介されていた。ホームページを拝読したところ、トルコ料理の素などもトルコ語の辞書を片手に表記されている原料を調べたりと、非常なバイタリティーの持ち主である。 送ったモンゴル料理の素はとても喜んでいただけたようだ。わざわざそのために、モンゴル料理の作り方をこれから猛勉強してくれるとのことで、頼もしい限りだ。そのうちに、できあがったモンゴル料理の写真やコメントが掲載されるであろう。とても楽しみである。

ストゥージン

モンゴル人と日本人の共通点として、食べ物を無駄にしないことを美徳とする点が挙げられる。およそ肉を食べるということはその動物の命を奪うことを意味するが、折り角犠牲になったその命を無駄にはせず、ほとんどの部位は食物として有効に利用される。食物として利用しきれなかった部位も、さまざまな日用品として加工される。 モンゴル語には「明日の脂身は今日の肺臓に及ばない」ということわざがある。明日になってご馳走である脂身をもらうよりは、今日中に肺臓をもらったほうがましという意味である。時機を得ていなければどんな価値のあるものでも意味がないという喩えだが、このことわざから、モンゴル人にとって最もご馳走なのは脂身であり、逆にそうでないのは肺臓だという事実がうかがえる。肺臓というは、いわば体内に入ってくる空気をろ過する働きをする器官であり、あまりおいしくないのは当然だろう。そうした部位ですらも、一応食べ物として認識されているということだ。 もっともらしいことを書いたが、実は私は内臓料理についてはあまり詳しくない。調査などのため、しばらくモンゴルの遊牧地域に滞在していたことはあるが、一介の客人にすぎなかった私は、ほとんど内臓を食事に出されることはなかった。単に滞在期間が短かったのか、現地の人たちも実際にはあまり食べないのか、お客にはあまり内臓を食べさせる習慣はないのか、その辺の事情は不明である。ともかく、数少ない記憶を呼び起こして、知る限りのことを記述したい。 腸を使った料理はかなり記憶にある。私の大好物は血のソーセージである。と殺するときに出る血液も捨てずにとっておいて、そば粉や小麦粉、ねぎなどを混ぜ、よく洗った腸の中に詰めて茹で上げる。現地に行ってもなかなか遊牧地域まで行かないと口にすることはできないが、機会があったら食してみられることをお勧めする。大草原の息吹が感じられる一品である。 内モンゴルの西ウジュムチンにいた頃、胃の料理をご馳走になったことがある。旗(行政単位名)の中心にあるお宅でだが、たしか中華料理のような炒め物だったと思う。 内臓というわけではないが、睾丸を食べたこともある。同じく西ウジュムチンの遊牧地域のお宅に滞在していたときのこと、春先に子羊を種羊とそうでない羊に選り分けて、去勢する作業が行われていた。そのときに出た睾丸は、炒め物にしてその日の夕食となった。あまり好んで食べたい気分ではなかったが、何かというと人前では「オイシイデス、オイシイデス」を連発して、冷や汗をかきながらもニコニコと料理を食べるよう厳しくしつけられた日本人であった私は、食べながらモンゴル語でさもとってつけたように「おいしい」と言ったのだが、モンゴル人の奥さんはなんとも複雑な表情をしていた。 牛肉の硬くて食べられない筋の部分は、煮凝りを作るのに利用される。モンゴル国の遊牧民のお宅で、旧正月の年越しの日に作られたご馳走で、「ストゥージン」とロシア語で呼ばれていた。四角く切ってお皿に並べ、ザクースキー(ロシア語でオードブルの意)としゃれ込んでいた。実家に帰った折にその話をしたら、「ずいぶん文化レベルが高いね」と父がしきりに感心していた。モンゴル語に固有の煮凝りを指す単語があるのかどうかは知らないが、このストゥージンもわりとポピュラーな料理であるようだ。ただしこれも、口にできるのは遊牧地域限定である。 羊の頭なども小刀を片手に肉をこそげとって食べる。慣れないとちょっとぎょっとするが、日本でも大きな魚の頭を食べたりするので、その感覚なのだろう。日本に留学しているyanzagaさんのブログ(モンゴルのいろいろhttp://blog.goo.ne.jp/yanzaga)によると、特に目玉がおいしいのだという。また、どのようにして食べるのかは知らないが、脳みそなども利用されているようだ。 骨付き肉はすべて肉をこそげとって食べるだけでなく、骨をかち割って骨髄の部分まで食べることがある。まさに「骨の髄まで」である。ここまでして無駄なく食べつくされれば動物の命も浮かばれようというものだ。あるいは、ひょっとしてそう考えるのは我々日本人やモンゴル人だけなのだろうか。一切の殺生を禁ずるインドのジャイナ教徒の人や、捕鯨しておいて油だけとって捨ててしまうことで有名なアメリカ人がいたらちょっと聞いてみたい気もするが。いや、ちょっと話が脱線してしまった。

モンゴル人の味覚(7)

モンゴル料理の主食は何か?この質問はちょっとやっかいである。日本語でいう「主食」という概念は、エネルギーの供給源として主に摂取される炭水化物のことであって、通常はお米、パン、麺類などがイメージされる。そういう意味で、正確にはモンゴル語には主食に相当する概念はないが、多くのモンゴル人は「我々は主に肉と小麦粉を食べている」と言う。では、小麦粉が主食で肉がおかずなのかといえば、それもちょっと違う。モンゴル料理ではあくまでも肉が主役であり、小麦粉はせいぜいその相手役ぐらいにしか過ぎない。 とはいえ、モンゴル料理ほどに小麦粉の用途が多様な料理は珍しい。日本では小麦粉の用途というとせいぜいがうどんなどの麺類かパンやお菓子、あとは天ぷらにすいとんぐらいなものだろう。 モンゴル料理のうち、小麦粉で肉を包んで作られたものの類はビトゥー・ホールと呼ばれる。ビトゥーとは隠れたとか閉じたという意味で、ボーズ、ホーショール、バンシがこれに含まれる。来客時にはこれらのビトゥー・ホールを作ってもてなすことが多い。特別な料理でもあるが、日常的な家庭料理でもあり、町の大衆食堂でよく食べられる料理でもある。 ツォイボンというモンゴル式焼きそば、肉入りの煮込みうどんなども大変ポピュラーな料理だ。マントウという蒸しパンも野菜のスープのつけ合わせとしてよく食べられる。中華料理では扁平なものや半球状のものは饅頭(マントウ)と呼ばれ、くるくると花のように巻いて作ったものは花巻として区別するが、モンゴルではいずれもマントウと呼ばれる。また薄く平たくした生地を四角く切ってゆでたパスタのようなものもある。主にゆで肉のつけ合わせとして食される。 モンゴル人がよく「金メダルの料理」と呼ぶものに、バンタンという料理がある。作るのが簡単だから金メダルなのだろう。小麦粉にごくごく少量の水をかけ入れてかき混ぜ、ちょうどアフリカのクスクスのようなダマダマにする。これを細かく切った肉入りのスープで煮て食べる。友人がうちで作ってくれたところ、我が家のナイR氏が「あれっ、まだうちにクスクスの買い置きって残ってたの?」と聞いたので、手作りだよと言ったらちょっと驚いていた。 これらの料理以外に、乾いた食べ物(ホーライ・イデフ・ユム)と呼ばれるものがある。ボーブ、ボールツァグ、ガンビルなどといった、揚げパンとお菓子の中間のような存在だ。家庭で自分で作る人もいるし、都市部ならば近所の食料品店で買うことができる。朝ご飯、ときにはお昼ご飯もこれらとお茶だけで済まし、料理を作るのは夕ご飯だけという家庭も少なくない。 モンゴル国では、朝ご飯やお昼ご飯としてパンもよく食べられている。都市部ではお店で買うのが一般的だが、遊牧地域ではたいてい自分で焼く。オーブンがなくても鍋などを竈にかけて器用に焼いてしまう。都市部で売られているパンにはロシア式の黒パンもある。ちょっと酸味があってオツな味だ。内モンゴルではあまり食事としてパンを食べる習慣はない。どちらかというと子供のおやつ程度の感覚のようだ。モンゴル国においても内モンゴルにおいても、日本人が好むようなふにゃふにゃ、ねちゃねちゃ・・・失礼、ふわふわ、もちもちとした食感のパンは少ない。モンゴル国のパンは中身がつまってゴツゴツしているし、内モンゴルで売られているパンは一応フランス式を標榜しているらしいのだが、なぜか乾いてパサパサしている。 お米はあまり中心的な位置付けではなく、お年寄りの中には「身体を冷やす性質がある」といって嫌う人もいるが、それなりに食べられている。ボタータイ・ホーラガという料理があり、肉がたっぷり入ったチャーハンのようなもの、または肉と野菜を炒めたものにご飯をそえたものを指す。ご飯と具を別々に盛り付けるのは近代的なスタイルだという。日本人に馴染みのないものかもしれないが、この他に乳の粥がある。乳は主に牛乳で、塩と砂糖を入れてお米を煮る。お粥といってもドロドロのものではなく、スープ状である。お米と牛乳と砂糖という組み合わせを奇異に感じられる人もいるかもしれないが、実は英語ではライス・プディングと呼ばれ、世界各国に存在する。また、炊いたご飯にシャルトス(モンゴルバター)と塩と砂糖を混ぜたものなどもある。 モンゴル語でフーフディーン・ボター(子供用の穀類)、またはロシア語でカーシと呼ばれるものもある。粗挽きの小麦、つまりセモリナのことだ。これも乳の粥と同様にオートミールのようにして食される。乳の粥やフーフーディーン・ボターは離乳食としても利用されている。まれに、はったい粉を食べることもある。内モンゴルでは粟が非常に好まれている。モンゴル茶に入れたり、ジョーヒーと呼ばれる生クリームのようなものに混ぜて食べたりする。この他に、内モンゴルではモンゴルに自生するそば粉を使った料理もある。掌と指先を使ってくるっと平たくしたモーリン・チフ(猫の耳)と呼ばれる料理などだ。

モンゴル人の味覚(6)

太古から遊牧を生業としてきたモンゴル人にとって、伝統的に油脂はご馳走であり、富の象徴でもあった。概してモンゴル人はこってりした味付けを好むようである。モンゴル料理を口にした日本人は、油っぽいという印象を抱くことが多い。 元来、モンゴルで食されてきたのはほとんどが動物性油脂だった。良質な牧草と天候に恵まれて丸々と肥えた家畜にほどよく付いた脂身は、肉の赤身部分よりもご馳走とされる。さらにその脂身を加熱することによって油が得られる。家畜の乳(主に牛乳)からも、シャルトスと呼ばれるモンゴル式バターが作られる。乳を加熱攪拌して乳脂肪分を分離させることによってウルムと呼ばれる乳製品を作り、さらにそれを加熱するという複雑な工程を経て作られる貴重品である。主にモンゴル茶に浮かべたり、パンにつけたりして食される。 近年、特に都市部においては、料理に使われる油はほとんど植物性油となっている。シャルトスなども、遊牧地域にいる親戚から送ってもらうなどしなければ入手困難であり、代わりに輸入品のマーガリンが日常的に用いられている(内モンゴルでは工場生産されたシャルトスを購入することができるし、マーガリンを食べる習慣はない)。脂肪の摂りすぎは健康によくないとの認識が広まりつつあるようだが、脂身は依然として好まれている。 我が家にモンゴルの友人が滞在していた時のこと。サラダを作ろうとしたら、冷蔵庫にはノンオイルタイプのドレッシングしか入っていなかったので、買い物のついでにドレッシングも別の物を買い足した。シーザーサラダ用のドレッシングだ。こってりしていて、ほんのりチーズ味で、いかにもモンゴル人が好きそうである。これでシーザーサラダを作り、好物のチーズとコーンをトッピングしたらこれがバカウケで、彼女のお気に入りメニューの一つとなった。ノンオイルタイプの酸っぱいドレッシングだったら、こうまでは受けなかっただろう。

モンゴル人の味覚(5)

モンゴル国の都市部で一般的に手に入る野菜は、ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、キャベツである。この他、トマトとキュウリもサラダに用いられる。近年ではピーマンも手に入りやすくなっている。以前は黄色いカブもよく食されていた。ちょうどジャガイモとカブの中間のような食感で、ホクホクとしておいしいのだが、最近では「あんなものは家畜の食べ物だ」と言われ、皆食べなくなったという。ボルシチの材料でおなじみのビーツ(赤カブ)も、日本に比べると手に入りやすい。モンゴルでもボルシチはしばしば食卓に登場する。この他にもウランバートルにあるメルクールなどの市場に行けばナス、大根、白菜、各種の葉物野菜、乾燥豆といった野菜も手に入るが、あまり鮮度はよくない。こうした市場はやや割高であって、一般庶民はほとんど近寄らない。そのため、これらの野菜を見たことはおろか、名前すら知らない人が多い。 モンゴル国の遊牧地域では、野菜は非常に手に入りにくい。手に入るとしてもせいぜい2~3種類で、日々の食事には野菜を全く使わないということも珍しくない。もともとあまり需要がない上に、保存や運搬にもコストがかかりすぎるのだろう。遊牧民は概して野菜を好まないが、すべての人がそうだというわけでもない。遊牧民が街に出てきたとき、野菜を食べたがるという話も聞いたことがある。調味料の項で述べたように、野生のニラやネギを食べることもあるが、使われるのはほんの味付け程度の僅かな量である。 内モンゴルの都市部では野菜は豊富である。とりあえず一通りの野菜は揃うし、日本では見かけないような野菜もたまに売られている。これらの各種野菜を使った中華風の野菜炒めは日常的に食されている。内モンゴルの人は、どちらかというと玉ねぎやキャベツのような洋野菜よりは長ねぎ、白菜などを好むようだ。このため、モンゴル国とは違って、ボーズ、バンシなどのモンゴル料理に玉ねぎを使うことはほとんどない。最もよく使われるのはニラで、その他、白菜、ニンジン、長ねぎなどである。 内モンゴルの遊牧地域では、野菜はやや手に入りにくいが、好んで食べられているようだ。春先の乳製品や肉の蓄えが枯渇した時期など、中華風に野菜炒めと米飯で食事をすることもある。遊牧民のお宅に行くときに、手土産に野菜を持っていくと喜ばれるという。トマトなども村の中心で手に入るが、どちらかというと高級品扱いされている。

モンゴル人の味覚(4)

モンゴル料理の代表格といえば羊肉である。それも特別な事情がある場合を除き、食されるのはラムではなくほとんどマトンのみだ。モンゴルには、成長しきっていない動物を食べる習慣はない。 モンゴルで一般的に飼われている家畜は、馬、牛、ラクダ、羊、山羊の五畜であり、これらはいずれもモンゴル料理の材料になる。モンゴル国、内モンゴルのいずれにおいても、また都市部、遊牧地域を問わず、羊の次に好まれるのが牛肉である。馬肉も好まれるが、身体を温める効果があるとされ、夏場の食用には適さないという。また、内モンゴルでも馬は食されるが、一部の地域ではタブーとされる。ラクダ、山羊の肉はさほど好まれない。 都市部では豚肉、鶏肉、魚などを食べることもある。特に内モンゴルの都市部では豚肉は日常的に食材として利用されている。ただし、鶏肉や魚はどちらかというと高級食材であり、普段はめったに口にすることはない。そのため、ご馳走というイメージを持つ人もいれば、食べつけないので好まない人もいる。ただし、缶詰の魚は比較的手に入りやすいようだ。なお、モンゴル国においても内モンゴルにおいても、スープには豚肉を使いたがらない。 魚が好きなモンゴル人でも、イカやタコなどの軟体動物、エビやカニなどの甲殻類は苦手である。市場ではドイツ製のキャビアなどが売られているが、魚卵も食べられる人は少数派のようだ。