《訳語類解》《同文類解》《蒙語類解》について
《訳語類解》《同文類解》《蒙語類解》は李朝時代に外交実務と通訳官養成のための外国語教育を管掌した司訳院から刊行された漢語、満州語、蒙古語辞典である。 以下のサイトに、福田和展「《訳語類解》《同文類解》《蒙語類解》の漢語見出し語の異同について : 司訳院類解辞書中の漢語について(その2)」という論文が掲載されている。全文をPDFにて閲覧することができる。 http://ci.nii.ac.jp/naid/110000961942/
《訳語類解》《同文類解》《蒙語類解》は李朝時代に外交実務と通訳官養成のための外国語教育を管掌した司訳院から刊行された漢語、満州語、蒙古語辞典である。 以下のサイトに、福田和展「《訳語類解》《同文類解》《蒙語類解》の漢語見出し語の異同について : 司訳院類解辞書中の漢語について(その2)」という論文が掲載されている。全文をPDFにて閲覧することができる。 http://ci.nii.ac.jp/naid/110000961942/
モンゴル料理の醍醐味といえば、大きな骨付き羊肉の塩茹でであろう。調味料は基本的に塩だけ。いたってシンプルであるが、羊肉そのもののうまみで、ゆで汁も濃厚な出汁が出て美味しい。羊が豊富なモンゴルならではの料理である。 その他にも、ボーズ、ホーショール(内モンゴルではシャルビン)、バンシなどの羊肉を使った料理が豊富だ。材料は羊肉と小麦粉と少量の野菜。味付けはこれも基本的に塩だけである。 ただし、全てのモンゴル人が羊肉だけを食べているかというとそうでもなく、また塩味だけかというとそうでもない。 モンゴル国の都市部では、ロシアの影響もあってヨーロッパ風の味付けが好まれるようだ。最も多用される調味料は塩、胡椒だが、他にマヨネーズ、ケチャップ、固形コンソメ、ローレルの葉などがよく使われる。ツォー(モンゴル語でソースや醤油を指す語)と呼ばれるチェコ製のソースも一般的だ。稀にキャベツのサラダを作るときなどに酢、砂糖も利用されるが、極端に酸っぱい味付けは苦手なようで、料理に砂糖を入れることもほとんどない。また、概して辛い味付けは好まれない。たまに唐辛子を使用する人もいるようだが、ごく少数派であろう。スパイス類も苦手のようだ。ただし、ハーブにはさほど抵抗がないようである。モンゴルで売られている固形コンソメ(ロシア製?)には少量のハーブが含まれているし、モンゴル人が好むピクルスもハーブ味だからだと思われる。また、にんにくも比較的よく使われる。しょうがの乾燥粉末も市場で手に入るが、さほど一般的ではない。 モンゴル国の遊牧地域では、手に入る調味料は非常に限られている。ほとんど塩味だけか、たまに客人が来たときに食卓にケチャップが登場するぐらいである。それ以外の味付けにあまり慣れていないということもあるようだ。たまに野生のネギ、韮などが薬味的に使われる。 内モンゴルの都市部では中華料理の影響が強い。醤油、味噌、胡麻ペースト、黒酢、唐辛子などが多用される。生のしょうが、にんにくがよく使われるのも特徴である。たまに砂糖も使われる。スパイス類としては、中華料理でおなじみの五香粉、花椒などが好まれる。逆に胡椒はほとんど使われない。フフホトなどでは新疆出身者が屋台を出して串焼きの羊肉が売られているが、これに使われているクミンなどのスパイスにもあまり抵抗がないようである。ただし、モンゴル人自身が料理をするときにこれらのスパイスを使うことはない。ケチャップやマヨネーズなどは全く使われないといってよい。内モンゴルの都市部では中華料理を食べることが多いが、ボーズ、シャルビン、ベンシ(モンゴル国ではバンシという)などの民族料理であっても、様々な薬味や調味料を入れて味付けすることがある。味付けの仕方は同じ内モンゴルの都市部でも地方により、家庭により様々だが、醤油、五香粉などを入れて作ることが多いようだ。 内モンゴルの遊牧地域では、モンゴル国の遊牧地域と比べると人口が密集しているとはいえ、やはり買い物は不便である。そのため、調味料も都市部に比べると限られている。中華料理を作っても塩味だけということもある。乳製品が調味料的に使われることもある。煮込みうどんに発酵乳やミルクを入れたりする。日本人の感覚では奇異に感じられるかもしれないが、クリームパスタの類と考えれば納得できるだろう。地方により、生クリームの一種(ジョーヒーと呼ばれる)を使って煮込んだパスタ料理のようなものも存在する。
モンゴル料理は簡単か?答えはイエスでもあり、ノーでもある。 モンゴル料理を作ろうとするならば、まずは小麦粉をこねるところから始めなければならない。出来合いの乾麺や春雨を使った料理も存在するが、大部分は小麦粉生地で作られる料理である。 肉もスライス肉やひき肉など売られていない(内モンゴルではひき肉は比較的手に入りやすい)ので、牛だったら大きな塊肉、羊や山羊だったら骨付きの脚一本などを自分でさばかなければならない。ひき肉は自分で細かく切るか、ミンチ器があればそれを使う。しかし、モンゴル料理の持つ本来のおいしさを引き出すには、機械ではなく手でひき肉にしたほうがよいとされる。 遊牧地域に行けば、肉の調達も家畜をと殺するところから始めなければならない。と殺は通常男性の仕事だが、女性には内臓をより分けて洗い清めたり、大きな骨付きの肉をさばく仕事が待っている。数日間で食べきれない量ならば、肉を細長く切って吊るして乾燥させたり、凍らせたりして保存する。塩漬けにする地域もある。もっとも、モンゴル国の遊牧地域では牧地がよく家畜が豊富なので、数日に一頭の割合で家畜を消費することも珍しくないという。 遊牧民のお宅では、朝起きたら一番に主婦が竈に火をくべる。モンゴル茶を沸かすのである。燃料は乾燥した牛糞(樹が豊富な地域では薪)だが、これだけだと火がつきにくいので、小枝などを拾ってきてナイフで細かく裂いて火を起こす。私事で恐縮だが、私の左人差し指には目立たない程度ではあるものの、切り傷の痕が残っている。10年前に竈に火をくべる手伝いをした時のものだ。 モンゴル茶の材料となるミルクも、遊牧地では当然のことながら自分で搾らなければならない。これは通常女性の仕事だ。映画やドキュメンタリー番組などで見ているとシャーシャーと簡単そうにみえるが、これも慣れるまではなかなかコツが要る。まず放牧されていた母牛達を連れてきて、柵の中からその子牛を一頭ずつ放し、ちょっとだけ乳を吸わせてから力任せに子牛を引き離して柵などに括り付け、その隙に乳絞りをする。まず子牛に吸わせてからでなければ乳の出がよくない。残酷なようだが、人間が乳絞りをしないと乳を飲みすぎて子牛がお腹をこわすこともあるのだという。最後にもう一度子牛を放して今度は思う存分乳を吸わせる。 なお、都市部では近郊から売りに来たミルクを買うか、工場でパック詰めにされたものを買うことができる。内モンゴルでは脱脂されていない粉ミルクが出回っていて、どこの家庭でもよく利用されている。 もう一つ大切なことが残っていた。水汲みである。都市部でこそ水道が完備されているが、遊牧地域では川や井戸に水汲みにいかなければならない。家族総出でラクダ車にブリキの桶を積んで汲みに行くお宅もあるし、一人でバケツをぶら下げてえっちらおっちら運ぶこともある。川や井戸まで10分近くかかることもあり、かなりの重労働だ。 小麦粉、塩、茶葉などは自給自足というわけにいかないので、村の中心まで行ったときに買い込んでおくか、行商人がやってきたときに買うなどする。小麦粉は10kg単位で布袋に入って売られている。 モンゴルの遊牧地域では、これらの下準備全てができてこそ、主婦として一人前である。都市部ならば最低限、小麦粉をこねて肉をさばくことができなければならない。こう書くと、モンゴル料理は恐ろしく難しいもののように思われるかもしれないが、それはとっかかりだけである。基本をマスターさえしてしまえば、あとは胸がすく程に単純明快な世界が広がっている。
モンゴル料理を大別すると、モンゴル国の料理、内モンゴルの料理に分けられる。さらに、それぞれを都市部の料理、遊牧地域の料理に細分することができる。 (a) モンゴル国の都市部の料理(b) モンゴル国の遊牧地域の料理(c) 内モンゴルの都市部の料理(d) 内モンゴルの遊牧地域の料理 幸いにも私はモンゴル国、中国内モンゴルの両方とも長期滞在の経験があるし、都市の生活も遊牧地域での生活もそれぞれ体験している。そこで、これまでの見聞を踏まえて、モンゴル料理について述べていきたい。 ここで便宜的に「都市部」、「遊牧地域」と分けたが、実際にはモンゴル語における「都市部(hot)」の対立概念は「田舎(hodoo)」である。ただ、日本語で「田舎」というとどうしても農村をイメージしてしまうし、「田舎くさい」などの差別的なニュアンスも含まれてしまう恐れがあるので、ここではあえて「遊牧地域」とした。県や村の中心に住んでいる人々は遊牧を行っているわけではないが、自宅で牛を飼っていることも多く、女性の県庁職員が朝の出勤前に乳搾りをしていくなんて話も聞いたことがある。乳製品や肉類は都市部に比べると豊富だし、手に入る野菜や調味料も限られている。そこで、広い意味での酪農文化圏ということで、遊牧地域に分類しても差し支えないと思う。
モンゴルの友人が、怪我の治療のために我が家に3ヶ月ほど滞在した。ただでさえ気苦労の多い外国暮らし。特に、怪我や病気で心身共に弱っている時には、できるだけ本人が楽だと思うような環境を整えてあげるのが一番である。そこで、毎日のお料理も極力モンゴル人の口に合うようにとかなり工夫した。 まず、来日後はスーパーに走って、モンゴルでも手に入るような野菜のみを大量に買い込んだ。根菜類御三家(私が勝手に名づけたのだが)であるジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ。そしてキャベツとトマトときゅうり。モンゴル人が日常的に食べつけている野菜といえばこのぐらいである。さらに、我が家のナイR氏には、会社帰りに肉のハナマサに寄って牛肉と羊肉を買ってきてもらった。そして小麦粉が数袋。最初はこれだけの材料だけでスタートさせた。味付けはモンゴル人好みに塩こしょうだけのシンプルなもの。たまに、本国でもよく使われるケチャップとマヨネーズも利用した。 様子をみて、週に1種類のぐらいのペースで野菜の種類を増やし、メニューも日本の家庭料理風なものを取り入れていった。ちょうど彼女は近々結婚をひかえているので、どうせだから色々な料理の作り方を覚えていきたいという話になった。そこで、モンゴルで比較的安価に手に入る材料を使い、かつモンゴル人の味覚に合わせた献立作りが始まった。 一番最初に食べさせたのはオムライス。チキンライスを卵で包んでケチャップをかけただけの古典的なやつで、オムライスの上に彼女の名前をモンゴル語で書いてあげたら大喜びで、写真に撮ってくれとせがまれた。次にトライしたのはトンカツ。これも大当たりで、日記帳に作り方をメモしていた。モンゴル人の嗜好を熟知している人にとっては意外かもしれないが、トンカツに添えたキャベツの千切りまで気に入ったという。「ブルドッグソースをかけて食べるとおいしい」と言うのだ。 ついには、大学ノートを1つ用意して、料理の作り方をメモしたレシピ帳を作成することになった。最初のうち本人は「ノートが60ページあるから、レシピ60種を覚えて帰る」と豪語していたが、結局最終的に伝授したレシピは25種となった。3ヶ月の滞在にしては少ないと思われるかもしれないが、モンゴル料理を作ったり、ナイR氏の要望で日本料理を食べた日もあったし、殺人的な忙しさだったので、お惣菜を買って済ませただけの日もあったからだ。 何はともあれ、色々と工夫した甲斐あってか、何を作って食べてもおいしい、おいしいと言って食べてくれ、「日本料理はおいしい」と固く信じたまま、無事帰国の途に着いたのであった。本当のところ日本には、モンゴル人の口に合わないような料理も山ほどあるのだが・・・・・・。