コンテンツへスキップ

Month: November 2010

バランス外交

社会主義時代のモンゴルは、過度な旧ソ連寄りの政策をとってきたため、衛星国と揶揄されるほどだった。しかし、1980年代後半に旧ソ連で起こったペレストロイカを受けて、モンゴル国内でも民主化が高まり、1990年代に入って社会主義体制が崩壊した。 当時のモンゴル社会は、政治的にも経済的にもあらゆる面で旧ソ連に依存していたため、大混乱に陥らざるをえなかった。過去のそうした苦い教訓を活かして、モンゴルではすでには90年代から「バランス外交」という政策がとられてきている。つまりどれか一つの国とだけ緊密な関係を保つのではなく、自国に影響を及ぼしえる全ての国とバランスよく外交関係を樹立していくといった方針だ。 モンゴルが国境を接しているロシア、中国という二つの大国とは、そこそこ良好な関係を保ちつつ、これらの国による過度の干渉を避ける意味合いもあって、主にアメリカ、日本、ヨーロッパ諸国との外交関係に力を入れている。 さて、昨今の世界情勢を鑑みると、他の各国も一斉にバランス外交に乗り出しているように思える。アメリカは先日、日米同盟の深化を提言しており、その直後にはインドの常任理事国入りを支持する旨を表明した。ところが、今日行われた米中会談では、中国の覇権化をけん制する発言がなされる一方で、世界の二大経済大国としての関係強化が謳われたようだ。 先月来日したインドのシン首相と菅首相との会談では、経済連携協定(EPA)の締結などといった合意がなされたが、シン首相は会談で「インドは(中国との間に)国境問題はあるが、それをうまくマネジメントして進めようとしている。中国とは良好な関係を築いていきたい」と表明している。インドにとって、巨大市場と生産力を持つ中国は最大の貿易相手国でもあるし、ようやく落ち着いてきた国境問題にあまり波風を立てたくないというのが本音だろう。中国の側も対インド外交を重視しているようで、現にインドの常任理事国入りには中国も賛成を表明しているし、12月には中国の温家宝首相によるインド訪問が予定されている。 お隣韓国でも、すでに去年インドとの間に経済協定を締結している。今日、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領と中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席との間で行われた会談では、国際社会での孤立を恐れる中国と、経済的な結びつきを重視する韓国の利害が一致し、関係修復のための積極的な話し合いがなされたという。従来の日米韓の軍事的な結束を維持しつつも、経済的な影響力を持つ国々との連帯を強化する構えのようだ。 ドイツもまた、レアアース問題を発端として、対中国貿易への依存から脱却するためにロシア、ウクライナ、カザフスタンとの関係強化を模索しているようだ。日本も同様にロシア政府と共同で、カザフスタンのウラン鉱石をロシアで燃料に加工し、シベリア鉄道経由で運ぶ新ルートを開設する予定だ。このルートさえ確保されれば、中国を経由しなくてもモンゴルの産品を日本に輸入する道も開かれるかもしれない。 しかしながら、ロシアとの間には根深い北方領土問題があり、まだ乗り越えなければならない課題が山積している。つい先日もロシア大統領の北方領土訪問が問題となったが、再熱した領土問題への対応如何によってはその道も閉ざされてしまうかもしれない。それどころか、今日行われた中国とロシアの会談では、両国の戦略的パートナーシップをあらゆる分野で発展させる旨の合意が行われている。 カザフスタンについても、関係強化を狙っているのはこれらの国だけではない。先月には、韓国とカザフスタンがレアアースの共同開発協定に署名しているし、今日は中国全国人民政治協商会議の賈慶林議長がカザフスタン大統領と会談を行い、両国の戦略的パートナーシップを促進させる旨の話し合いが行われたという。 書いているうちに疲れてきたので、また後で・・・・・・。

日本の産業の行方

2010-11-03 | できごと

さほど資源に恵まれていない日本という国が、生き残るためにとってきた道は加工貿易であった。これは日本人ならば誰でも認識していることで、今さら私などが言うまでもないことだ。つまり、海外から豊富な資源を輸入し、日本国内で製品に加工し、再び海外に輸出する。 しかし、この加工貿易が成功を収めるためには、海外からの安定した原料の供給、製造加工のための低いコスト、十分な人口と購買力を有する市場といった3つの要素が不可欠だ。日本の産業は、これらの微妙なバランスの上に成り立っているといってもよい。 近代の日本は奇跡とも言われるほどの成長を遂げてきたが、必ずしもその道は平坦なものではなかった。石油ショック、人件費の高騰、プラザ合意後の急激な円高、バブルの崩壊・・・。国内での社会の変化だけでなく、目の前に次々とたち現れる国際情勢の変化に応じて、日本は臨機応変に産業形態をシフトさせながら、その命運を保ってきた。 特に人件費の高騰の問題は深刻だった。加工にコストがかかりすぎるようでは、他国で生産された製品との競争に太刀打ちできない。そのため、特に労働集約型産業の分野で、日本の企業は徐々に東南アジアや中国に生産拠点を移していった。 ところが、いくら人件費を抑える努力をしたとしても、昨今の世界的な大不況の影響で円高はとどまることを知らない。つまり、円が値上がりしたということは、同じ値段で販売しても諸外国にとっては日本製品の実質的な値上がりとなる。国際市場における日本の競争力の低下である。 ここまで重なった悪条件に、決定的なダメージを与えようとしているのは、最近のレアアース問題である。もちろん、レアアースが使われるのは一部のハイテク産業だけに限られるが、すでに単純な製造分野では国際競争力を失いかけている日本にとって、今さら労働集約型の産業に後戻りすることはできない。今後はどうしても、他国が追随できないようなハイテク分野を基幹産業とせざるを得ない。その原料となるべきレアアースの調達が滞ろうとしているのだ。 つまり、例えていうならば日本は、青息吐息のところへさらに首筋に鋭利な刃物を突きつけられたようなものである。もう待ったなしのところまできていると言ってよい。日本と同じく自動車や電機が主要産業であるドイツでも、その影響は深刻だ。ドイツの大手銀行のアナリストによれば、すでに半年か一年後には在庫が底を付き、価格の上昇は免れないという。 すでに日本は新たな調達先を模索しており、代替材料の開発、再生利用技術の研究も急ピッチで進められている。しかしながら、確実に予想されることは、今後のハイテク産業における原料費の高騰である。 亡国の危機を憂えると同時に、それを憂える気持ちがあまりにも少なすぎる周りの日本人の反応に、さらなる憂いを重ねざるをえない。