2009年に初めて伝統モンゴル文字のブログを作成したとき、IEでしか表示できず、他の文字との混在表示も困難だった。あれから15年以上が経過し、状況は大きく変わった。

現在、Unicode対応が進み、Noto Sans Mongolianなどのフォントを使えば、主要なブラウザで伝統モンゴル文字を表示できるようになった。しかし、新たな課題も見えてきた。

最大の問題は、縦書きレイアウトの実装だ。CSSのwriting-modeやflexboxを使っても、期待通りに表示されないことが多い。特に、伝統モンゴル文字の「左から右への改行」を実現するのは難しい。ブラウザが想定しているのは主に東アジアの縦書き(右から左改行)だからだ。

試行錯誤の結果、white-space: nowrapを使った親要素と、inline-blockの子要素を組み合わせる方法が最も安定していることがわかった。FlexboxやCSS Grid、CSS Columnsといった新しいレイアウト技術は、伝統モンゴル文字の表示には必ずしも適していない。

また、MVS(Mongolian Variation Selector)やFVS(Free Variation Selector)といった制御文字を正しく処理できるフォントの選択も重要だ。間違ったフォントを使うと、格助詞などが正しく表示されない。

WordPressテーマの開発では、これらの知見を活かして、日本語・キリル文字モンゴル語・伝統モンゴル文字の3つの言語モードに対応したシステムを構築できた。ただし、モバイル環境での表示最適化など、まだ改善の余地はある。

技術は進化したが、伝統モンゴル文字のWeb表示は依然として一筋縄ではいかない。今後も新しい解決策を模索していく必要がありそうだ。