モンゴルの友人が滞在中に、しばしばモンゴル料理の味付けが単調だということが話題になった。彼女はなかなかの親日家で、モンゴルに住んでいる日本人ともわりと交流があるらしいのだが、モンゴル料理の作り方を聞かれることがままあるという。一通りの作り方を説明するものの、味付けについて、ただ「塩を入れる」と教えると、「それから?」と聞き返されて答えに窮してしまうというのだ。日常的に利用されている調味料は、塩とこしょうぐらいなのだから仕方がない。良くいえば素材の持ち味を生かして料理するということだが、とにかくスパイス類の強い味と香りには慣れていないのである。
ところが、そんなモンゴル料理にも最近では変化が訪れようとしている。インスタント調味料の出現である。
「最近ではモンゴルではボーズ用の調味料っていうのが売られているのよ。」と彼女は言った。一瞬私は耳を疑って、
「うっそ~!ボーズってただ塩を入れるだけじゃないの」
「ホント、ホント。ボーズだけじゃなくて、ホーショール用とか、バンシ用とか、いろんな料理用の調味料が売られてるんだから」
という会話が交わされた。しかも、それを入れて作ると、お料理がとってもおいしくなると評判なのだそうだ。
モンゴル人にとっての料理がおいしくなる調味料とは、いったいどんなものだろうか。当然のことながら興味を持った私は、帰国してから郵便で送ってもらうように頼んでおいた。
先日、その例の「モンゴル料理の素」が届いた。ホーショールの素、バンシの素、ボダータイ・ホールガの素、ツォイバンの素、ゴリルタイ・シュルの素の計5種類が3袋ずつ入っていた。なぜかボーズの素は入っていなかったが、たまたま品切れでもしていたのだろう。
なるほど、とにかくこれはすごい。せっかくだから、私一人だけで楽しむのはもったいないので、つい最近ネット上で知り合いになった「Foods of the world」というサイトの管理人をしている方に1袋ずつをおすそ分けさせていただいた。
http://www.geocities.jp/foodsoftheworld/index.html
外国の「料理の素」を専門にあつかったホームページで、国ごとのインスタント調味料の写真とそのメーカー名や作り方の解説、原材料名、実際に作ってみた料理の写真などが載せられている。嬉しいことに、すでにモンゴルのページでホーショールの作り方も紹介されていた。ホームページを拝読したところ、トルコ料理の素などもトルコ語の辞書を片手に表記されている原料を調べたりと、非常なバイタリティーの持ち主である。
送ったモンゴル料理の素はとても喜んでいただけたようだ。わざわざそのために、モンゴル料理の作り方をこれから猛勉強してくれるとのことで、頼もしい限りだ。そのうちに、できあがったモンゴル料理の写真やコメントが掲載されるであろう。とても楽しみである。