今日はちょっと軽い話を・・・。モンゴルにはバンシという料理があるが、これはいわゆる水餃子である。玉ねぎのみじん切りと羊のひき肉を具にして作るのがモンゴル流だ。
アルトーシというモンゴルの友人がうちに滞在していた頃のこと。おしゃべりをしていたら、バンシを作るときいちいち包むのがめんどうだという話題になった。モンゴルには「餃子の皮」なんてしゃれたものは売られていないので、作るとしたらまず自分で小麦粉をこねなければならない。冷凍バンシも売っていないことはないが、割高なのであまり使う人はいない。
趣味で週末に作るならともかく、毎日のお惣菜として作るのだから大変だ。しかも彼女は仕事を持っている身で、朝早く出かけて夜帰ってくるのもかなり遅い。大変なのは炊事だけではない。洗濯も手洗いだし、掃除をするにも掃除機などというものはないのですべて手作業だ。
しかも、アルトーシがバンシを包むと、家族や親戚に形が犬のうんこみたいと文句を言われるのだという。ボーズを作るときはかなり器用にすいすいと包んでいたのだが、なにぶんバンシはひとつひとつが小ぶりなので大変なのだそうだ。
そんなわけで、私が日本人の浅知恵を出して、100円ショップから餃子包み器を買ってきてプレゼントしてみた。「あら、そんな話まで覚えていてくれたの」とちょっとびっくりしていたが、まんざらでもない様子。
試しに、さっそくそれを使ってバンシを包んでみたが、どうも包み器に生地がくっついたり、具がはみ出たりとうまくいかない。これはあんまりよくないんじゃないかと思い、ふとアルトーシを見たところ、「これは便利!」と露天商のサクラみたいな声を出しながら手際よく上手に包んでいった。
さて、包み器で作ったバンシは、ゆで上がったものを見ると巨大なラビオリのようであった。それでも彼女はかなりご満悦。ついでに別の日にはラビオリの作り方も伝授した。生地をのして具を乗せて、上からまた生地を乗せて、ルレットまたはナイフで切るだけなので、バンシよりははるかに効率的だ。アルトーシもこれは簡単だし楽でいいといって喜び、日本語で「オモシロイ」を連発しながら作っていた。今頃はモンゴルでも時々、ラビオリもどきのバンシを作っているのだろうか。