世界ウイグル会議の議長、ラビア・カーディル女史が来日した件について、各国のニュースサイトの記事を比較してみた。

台湾と中国の報道は、両国の政治情勢を考えれば当然のことかもしれないが、正反対ともいうべき内容が伝えられている。台湾の記事には、日本のメディアでも報道されなかった内容が一部含まれている。

モンゴル国の記事だが、ウイグル暴動直後に配信されたニュースでは、おそらく新華通信社からの情報をそのまま伝えたと思われる内容であった。また、今日(7月30日)の記事ではカーディル女史来日の情報を伝えており、産経ニュースの記事がほぼそのまま引用されている。

また、ドイツのサイトでは、カディール女史がインタビューに応じて「アメリカの対応は冷たい。中国に対して抗議したのはトルコだけだった」と発言したことが伝えられている。台湾の記事でもこれは大きく取り上げられており、さきほどの記事では「アメリカは冷たい」というのが見出しになっているほどだ。冷たいと言われて慌てたというわけではないだろうが、29日付けでアメリカのサイトでもカーディル女史をダライラマになぞらえ、ウイグルの母とみなされていることを伝える記事が掲載されている。

願わくばトルコのニュースサイトも漁ってみたいところだが、あいにくトルコ語は読めない。意外なことに同じテュルク系の民族であっても、カザフスタン、ギルギスタン、ウズベキスタン、タジクスタンといった中央アジアの各国はウイグルを非難する声明を出しているそうだ。中国との貿易協定を結んでいるため、関係悪化を恐れているためらしい。

各国でかなり異なる報道がされている背景には、人権意識の高さ、国内に不安定要因となる少数民族を抱えているか、アメリカや中国との関係などの差異があるだろう。また、情報が錯綜する中で、いかに冷静な分析を行えるかも重要な要素だ。

先日のウイグル暴動についても、少数民族への弾圧と見なすか、イスラム系のテロ事件と見なすかによって論調は180度異なるし、一部の日本のメディアのように曖昧模糊とした論説に終始しているところもある。

今回の出来事は、日本が特別に人権意識が高いというわけではなく、おそらくカーディル女史がノーベル平和賞の候補者になったことがあるというネームバリューに押されたのではないかと私は考えている。

��参考サイト>
中央社即時新聞(台湾)
http://www.cna.com.tw/SearchNews/doDetail.aspx?id=200907290212
新華ネット(中国)
http://news.xinhuanet.com/world/2009-07/30/content_11797704.htm
産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/china/090729/chn0907292118008-n1.htm
Olloo(モンゴル)
http://www.olloo.mn/modules.php?name=News&file=article&sid=1158074&catid=2198
euronews(ドイツ)
http://de.euronews.net/2009/07/29/uiguren-fuehrerin-erhebt-schwere-vorwuerfe/
CNN(アメリカ)
http://edition.cnn.com/2009/WORLD/asiapcf/07/29/china.activist.profile/