モンゴルにはウルムという乳製品がある。牛乳を弱火で加熱しながらひしゃくを空中に持ち上げるようにして上下に攪拌し、分離した乳脂肪分を集めたものである。味はバターとクリームチーズを併せたような得もいえぬ味わいがある。このウルムを加熱して油分を分離させたバターオイルのようなものがシャルトスと呼ばれるモンゴルバターで、いわゆる醍醐である。
このウルムは概して日本人にも好評で、これが苦手という人はむしろ少ないように思う。ただし、乳脂肪分を多く含むので、美味しいからといって食べ過ぎると気持ち悪くなるので注意が必要だ。
さて、このウルムにやや似たものとして、イギリスのクロテッド・クリームという乳製品がある。Wikipediaの説明によれば、脂肪分の高い牛乳を、弱火で煮詰めたものをひと晩おいて表面に固まる脂肪分を集めて作るそうだ。攪拌による分離こそしないものの、製法としてはかなりウルムに近い。イギリスではスコーンに添えて食べるのが定番だという。
このクロテッド・クリームは日本でも中沢、十勝しんむら牧場などで製品化して発売されている。ただ、コストを考えると致し方ないのかもしれないが、かなり高価だ。中沢の製品はちょうどサワークリームのような容器に入っており、以前にサワークリームと間違えて買ったことがある。中身はどろどろとしたバターと生クリームのあいのこのような味だった。
インターネットで探したところ、このクロテッドクリームを手作りする方法をブログに載せている人もいた。生クリームとマスカルポーネや、生クリームだけで作るのだそうだ。
http://milliamm.blog39.fc2.com/blog-entry-30.html
もしかしたら、低温殺菌のノンホモ牛乳や生クリームをうまく使えば日本でもウルムが作れるのかもしれない。