では、いよいよモンゴル国にある図書館の紹介に入ろう。モンゴルの総合情報ポータルサイトであるOllooの記事によれば、モンゴル国内には350ヶ所の図書館が存在するという。このうち、主な図書館へのリンクを集めたページとしては以下のものが便利だ。 American Center for Mongolian Studieshttp://webs.banjig.net/listdweb.php?lc_id=65Banjig Вэб лавлахhttp://www.mongoliacenter.org/mnlibrary/index.php?option=com_content&task=view&id=27&Itemid=40 上記のリンクを参考にしながら、各図書館について詳しく紹介していくことにする。ただし残念ながら、モンゴル国の図書館のホームページにはリンク切れのページや外部からのアクセスが不可能なものも少なくない。 Улсын Төв номын сан(モンゴル国立中央図書館)http://www.mnlibrary.org/ (アクセス不能?) 国立国会図書館の林明日香氏が行った調査によると、2004年現在での蔵書数は350万冊(マニュスクリプト200万冊を含む)で、そのうちチベット語の資料が120万冊である。同図書館に対するインタビューでは、モンゴル国内で出版された図書の大部分は収集できているとのことだ。現在、同図書館が所蔵しているモンゴル語資料のすべての書誌データは、マニュスクリプト資料も含めて電子化されており、館内のコンピュータから検索することができる。ただしインターネットによる外部からのアクセスは不可能だ。2001年までに整理された図書の目録“Монголын үндэсний ном зүйн бүртгэл мэдээллийн сан I”(モンゴル国内書誌登録情報)がCD-ROM で販売されている。(出典:アジア情報室通報 第2巻第3号) Монгол Улсын Үндэсний номын сан(モンゴル国立民族図書館)http://www.nationallibrary.mn/ まだサイト構築中のようだが、蔵書検索のページも作られており、将来的にはOPACによる検索も可能になるものと思われる。モンゴル学に関連するキリル文字モンゴル語、伝統文字モンゴル語、チベット語、サンスクリット語の資料を非常に豊富に所蔵する。同図書館からは、1921~2000年に出版されたキリル文字モンゴル語、伝統文字モンゴル語の書籍情報を含むCDが出版されている。 Үндэсний төв архив(民族中央アーカイブ)http://www.pmis.gov.mn/archives (リンク切れ) 1674以降のモンゴル史に関連する文献資料が保存されている。 というわけで、続きはまた明日。
モンゴルにも、日本の青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)のような電子図書館が存在する。モンゴル語の学習、研究にも役立つと思うので、主なものをいくつか紹介しよう。いずれもモンゴル語書籍を無料でダウンロードして閲覧することができる。 ELibrary.mnhttp://www.elibrary.mn/ 口承文芸、児童書、文学書、小噺、歴史書に分類されている。同サイトで閲覧数が多かった上位3点は、上から順に『元朝秘史』、『モンゴル詩選』、『トンガラグ・タミル(清きタミル川の流れ)』である。トンガラグ・タミルはモンゴル革命前後の民衆の人間模様を描いた作品で、モンゴル国ではかつて映画も製作されており、根強い人気を保っているようだ。 Онлайн Номын Санhttp://www.onlinebook.mn/ ほとんどが英語書籍だが、モンゴル語書籍も閲覧することができる。モンゴル語のものは児童書、文学書、歴史、コンピューター、翻訳書に分類されている。C言語の入門書などもあり、全362ページがPDFで閲覧できるというのもすごい。 Biirbeh.COM.http://www.biirbeh.mn/ 詩や小説などが電子化されている。作者別に分類されており、キーワードで検索することもできる。ホームページの読者が自分の作品を投稿することもできるようだ。 国際児童電子図書館http://mn.childrenslibrary.org/ アメリカのサイトのようだが、48以上の各言語によって書かれた児童書を閲覧することができる。モンゴル語で書かれた児童書を閲覧するには、Энгийн хайлтのページに入って中央のプルダウンメニューでМонгол хэлを選択すればよい。試しに検索してみたところ、237冊(2009年1月現在)の書籍が電子化されていた。
京都大学図書館http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/modules/search/index.php?content_id=1 キリル文字モンゴル語、内モンゴルで出版されたモンゴル語書籍、モンゴル関係の邦書までを含めると、膨大な冊数が収蔵されている。ここの図書館でしか閲覧できないというものはさほど多くないが、全体的に見て非常に充実している。京都大学にも言語学科があるためか、モンゴル語研究書籍、辞書はかなり揃えがよい。さらに、同図書館の谷村文庫には、『朝鮮司訳院日満蒙語学書断簡』という珍しい書物が収められている。新村出による解説付きで、京都帝国大学所蔵の板木により新刷刊行されたとのことだ。 一橋大学附属図書館http://www.lib.hit-u.ac.jp/service/index_Ja.html 同図書館には外国雑誌センターが設置されている。これは、日本国外で出版される学術雑誌を体系的に収集し全国的な利用に供することを目的に、文部省の特別予算措置を受けて設置されたもので、9つの国立大学附属図書館が外国雑誌センターの指定を受けているのだが、このうち人文・社会科学系は一橋大学附属図書館と神戸大学人文・社会科学系図書館が指定を受けている。以前、一橋大学附属図書館でモンゴル国の新聞を定期購読しているという話を聞いたことがあるのだが、筆者がOPACにより検索した限りでは探し出すことができなかった。 三康図書館http://www.f2.dion.ne.jp/~sanko/ 約25万5千冊の蔵書を誇り、仏教、宗教系の専門書が豊富だ。入館は有料で1回100円。モンゴル関係の書籍は特に豊富というわけではないが、近代(大正から昭和初期)のモンゴル語教科書、辞書などが何冊か収められている。 成田山仏教図書館http://naritasanlib.jp/ 近代のモンゴル関係の書籍が豊富で、中にはかなり珍しい書物も含まれている。特にモンゴル仏教関係の学術誌が充実しており、モンゴル語関係の書籍や論文も他の図書館では見かけないような珍しいものが散見される。ここの図書館はちょっとした穴場かもしれない。
中国内モンゴル大学の国家教育部民族学科蒙古学文献信息中心(モンゴル学文献情報センター)には、国内外の約11万冊のモンゴル学の文献が収蔵されている。 この他にも、ヨーロッパの一部の国が保有するモンゴル語古文書のレプリカ800余点が収蔵されており、これには清代の朱字木刻本『御制蒙古文甘珠尔经』、1721年にパリで刊行された『帖木儿武功记』、1725年にパリで刊行された『鞑靼世系』、1735年にパリで刊行された『中华帝国和中国属鞑靼地区地理、历史、年代记、政治和自然志』、清代の朱字木刻本のモンゴル語版『红楼梦』等が含まれる。 211プロジェクトの際には更に大規模な資金投入が行われ、新たに『清代蒙藏回部典汇』、清代の竹筆を使って金粉で書かれたモンゴル語版『能断金刚般若波罗密多经』、パスパ文字による数多くの古文書等の数多くの貴重なモンゴル学文献が加えられた。 さらに『御制蒙古文甘珠尔经』等の重要なモンゴル語古文書のコーパス化を行い、検索とオンラインでの閲覧を可能にしている。また、モンゴル学の文献目録の作成等の活動も積極的に行い、高水準の文献情報リサーチサービスを提供しており、5年間のうちの国内外からの来訪者は5万人を数えている。 <参考URL>http://www.imu.edu.cn/ghb/211/211-5b.htm (抄訳)
モンゴルの活仏といえばジェプツンタンパ・ホトクトだが、今はどうなっているのだろうとふと気になって調べてみた。すると、非常に面白い記事を発見することができた。 http://d.hatena.ne.jp/ragaraja/20081029/1225260981 うーん、これは文句なしに面白い。内モンゴルの活仏が台湾にまで流転していたとは、これは確かに初耳であった。その他にも、そもそもこれってみたいな疑問をネットでの情報を駆使して分かりやすくまとめてあり、なるほどと納得させられる。 よく見ると、ほとんどの情報はテングリノール(http://www.interq.or.jp/neptune/amba-omo/)の記事が元となっているようだ。私のような素人には整理された膨大な情報の山を見ただけでは猫に小判だったが、改めてテングリノール恐るべしである。 ところで、ダライ・ラマが「転生は自分の代で終わりにしたい」と述べていることについてだが、そんなふうに簡単に「や~めた」ということはできるのだろうか。転生をやめるとしたら、解脱して涅槃に入るぐらいしか方法はないはずだが、仏教的にはダライ・ラマは一応、観音菩薩の化身ということになっている。菩薩とは、すでに如来クラスの悟りの境地に至っているが、あえて菩薩の地位に留まり、この世に生まれてきて有情の救済に当たるという有難い存在なのだ。いや~、やっぱり菩薩が涅槃に入っちゃうというのは教義的にマズイんじゃなかろうか。確かに、生身のひとりの人間が少年時代の十分に物心もついていないうちに認定されて、それからの一生を活仏として過ごさなければならないというのは、ある意味で人道的に問題があるような気もするが。
日本でモンゴル関係の蔵書が豊富なのは、主に言語学、地域研究、文化人類学、歴史などの分野でモンゴル研究が盛んな大学、研究機関の図書館だが、この他にも見逃せないのは仏教系の大学図書館だ。 大正大学 附属図書館http://www.tais.ac.jp/lib/index.html 仏教関係の蔵書はもちろんのこと、特に満蒙関係の資料などのモンゴル史の文献も充実している。なお、まだデータベース化が完了していないモンゴル関係の貴重書も収蔵されている。 佛教大学図書館http://www.bukkyo-u.ac.jp/lib/ モンゴル語訳の『入菩提行論』など、モンゴル語関係の蔵書が充実している。 国際仏教学大学院大学 附属図書館http://www.icabs.ac.jp/lib/index.html 『蒙古語訳甘殊爾』をはじめ、内モンゴルで出版されたモンゴル関係の書籍が数多く揃っている。昭和初期のモンゴル語教科書、辞書なども含まれており、中には他の図書館ではめったにお目にかかれないような蔵書もある。 駒沢大学図書館http://www.komazawa-u.ac.jp/cms/library/内モンゴルで出版されたモンゴル関係の書籍が充実している。また、出版年は不明だが和装本の『蒙古篆字』という珍しい書物も所蔵されている。邦書もモンゴル関係の書物はかなり揃えがいい。 龍谷大学http://opac.lib.ryukoku.ac.jp/hp/index.htmlモンゴル史関係の蔵書が充実している。
学習院大学東洋文化研究所http://www.gakushuin.ac.jp/univ/rioc/knowledgecenter/archive.html 学習院大学東洋文化研究所の蔵書は東アジア学ナリッジセンターのデータベースで検索することができる。モンゴル関係の蔵書が豊富と謳われており、善隣協会などの資料が数多く収められている。モンゴル語研究に関する資料も多少含まれている。 静嘉堂文庫http://www.seikado.or.jp/menu.htm日本および東洋の古典籍および古美術を収蔵する文庫。数多くの貴重な古典籍と古美術品を収蔵しており、内外の古典籍を研究者向けに公開する私立の専門図書館であると同時に、併設する静嘉堂文庫美術館を通じて収蔵品を広く一般に公開する美術館活動を行っている。研究に資するため原則として原本を提供するという方針をとっているため、きわめて貴重な宋・元版を除き、明以降の中国の版本などは全て古典籍の原書が閲覧に供されている。閲覧は予約制で紹介状が必要。モンゴル語関係の蔵書については未確認。 財団法人 無窮會http://www.mukyukai.jp/index.html 神道、国学、国語国文、国史、漢籍、漢詩文、民俗学の古書。これらに関する明治以降の研究書、雑誌。閲覧のみが可能で、大学からの紹介状と会費を添えて入会した者のみ閲覧可能という、非常に敷居の高い図書館だ。無窮會東洋文化研究所という機関が存在するが、こちらは主に漢文学などを扱っているようで、モンゴル語関係の蔵書については未確認。同ホームページのリンク集には、漢籍の蔵書を検索するためのデータベースへのリンクが豊富だ。
前回までに各図書館の蔵書を調べる横断検索の方法を紹介したが、やはりこれだけでは全ての図書館の蔵書を調べることは難しい。しらみつぶしに探そうとするなら、やはり個々の図書館のOPACを使って気長に探したほうがよいだろう。それではこれまでに紹介したリンクに含まれていなかった図書館を順不同で紹介する。 財団法人東洋文庫(http://www.toyo-bunko.or.jp/) ここの図書館なくしてモンゴル語学を語ることはできないほど、貴重な書籍が豊富に収められた図書館である。モンゴル語書籍は、ホームページの[データベースの検索]→[Ⅰ書誌]→[モンゴル語資料 検索]を辿っていけば検索することができる。また、同じく[Ⅰ書誌]のページの[キリル文字資料]からも検索することができるが、キリル文字モンゴル語は[モンゴル語資料 検索]から検索したほうがよい。こちらからはむしろ、ロシア語で書かれたモンゴル語、ブリヤート語などに関する書籍などを検索することができる。 早稲田大学図書館蔵 モンゴル語書籍目録(Unicode版)(http://db2.littera.waseda.ac.jp/wever/mongol/goLogin.do) トップページには「中国刊行 モンゴル文文献目録」と書かれているが、モンゴル国において刊行されたモンゴル語書籍も検索することができる。歴史、文化、社会制度などに関係した書籍が豊富だ。近年に刊行された辞書、用語集はおそらくここの図書館の蔵書が最も充実しているだろう。 早稲田大学 学術情報検索システム(WINE)(http://wine.wul.waseda.ac.jp/) 意外と見落とされがちだが、早稲田大学にはかつて語学研究所という機関があったため、旧語学研究所の蔵書にも多少のモンゴル語書籍がある。これらは上述の「早稲田大学図書館蔵 モンゴル語書籍目録目」には含まれていないようなので、早稲田大学の図書館蔵書として検索すればよいだろう。 東京大学OPAC (https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac-query) 東京大学の言語学科には服部四郎、小沢重男などの優れたモンゴル語学者も在籍していた経緯もあり、さらに東洋史関係の資料も含めると、モンゴル語書籍の蔵書はかなり豊富である。ただし、最近になって刊行されたモンゴル語書籍はあまり充実していない。 東京大学東洋文化研究所漢籍目録 http://www3.ioc.u-tokyo.ac.jp/kandb.html 文字通り漢文で書かれた書籍が主に収められている。「蒙」というキーワードで検索すると、「啓蒙」だの「蒙求」だのと関係ないものもかなりひっかかるが、ちまちま探していくとモンゴル語関係の書物を見つけることができる。『東大東洋文化研究所所藏江上博士收集蒙文佛典』などという書物も収められており、管見の限りでは唯一ここの図書館にしかない珍しいものだ。 というわけで、続きはまた後ほど。
全国の大学図書館には、多言語対応OPACを導入するところが増えてきている。そのため、キリル文字モンゴル語を入力して検索したり、簡体字の中国語を入力して中国で出版されたモンゴル語書籍を検索するなどが可能だ。以下のサイト(福山市立女子短期大学 附属図書館)は多言語対応OPACの一例である。http://www.lib.fukuyama-jc.ac.jp/opac/expart-query?mode=2 デフォルトではローカルデータベースの検索のみになっているようだが、画面左上の「国立情報学研究所」にチェックを入れると、全国の大学図書館に所蔵されているモンゴル語書籍を検索可能だ。例えば、толь(モンゴル語で「辞書」の意味)という語を入力して検索してみると、「国立情報学研究所で133件見つかりました」という結果が表示される。つまり、国内の図書館にある約133種類のモンゴル語辞書のリストを一望できるということだ。 とはいえ、なぜかこの検索結果にはモンゴル語ではなくロシア語のものや、全く関係ないものも含まれている。また、内モンゴルで出版されたモンゴル語辞書などは別の方法で検索しなければならないし、このデータベースに全ての蔵書が登録されているとは限らない。だから冊数は大体の目安と考えた方がいいだろう。 さて、試しに検索結果の一番最初に表示されたW醇rrterbuch Mongolisch-Deutsch(モンゴル語-ドイツ語辞典)をクリックしてみると、書誌情報と所蔵図書館のリストが表示される。この辞書は国内の9箇所の大学図書館に所蔵されているようだ。「請求番号」も表示されるので、当該の図書館に行って手続きをすれば閲覧できるというわけだ。
図書館の蔵書を探すためには、OPAC(オンライン蔵書目録)を利用すればよい。最近ではたいていの図書館でOPACを備えているので、専用の端末を利用して検索できる。もちろん、自宅のPCから検索して必要な資料の所在があきらかになったらそこに行って閲覧してもよい。以下の国立情報研究所によるOPACを利用すれば、各図書館(主に大学図書館)の蔵書を検索することができる。 http://webcat.nii.ac.jp/ (Webcat) とはいえ、やはりモンゴル語研究のための文献を所蔵する図書館は限られている。モンゴル語書籍を探すなら、以下のリンク集をたどって各図書館のOPACから検索したほうがよいだろう。 http://www.ndl.go.jp/jp/service/kansai/asia/directory/language_east.html#mon (モンゴル語書籍所蔵図書館のリンク集)http://asiaopac.ndl.go.jp/ (アジア言語OPAC) とりあえず、今日はこの辺で。