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Category: モンゴル語研究

モンゴル数字の書体

先日、故あって恩師から服部四郎著の『蒙古字入門』をいただいた。ちょうど時期的にいろいろと重なって、いいかげん学問も諦めようかと弱気になっていた矢先のことだった。 服部四郎といえば、『音声学』という幻の名著の著者で、言語学を学ぶ者ならば知らぬ者はいない存在だが、この『蒙古字入門』を読んで、改めてそのすごさをまざまざと実感させられた。 蒙古文字(縦書きのウイグル式モンゴル文字)には、通常使われるものの他に、経典などでチベット語音やサンスクリット語音を表すための十七世紀の初に作られた、ガリック字という字母がある。同書には、その活字体のローマ字転写の表も収められていて大変便利である。序文によると、ガリック字母の字体はシュミットの文典や同文韻統(乾隆内府原刻本)などを参照して決定したとのことである。 中でも特に感動させられたのは、蒙古文字で使われるモンゴル数字の書体に二通りあるということである。蒙古文字にはチベット数字とよく似た特別の数字があって、文の中では時計回り90度に横に倒し、縦組みで用いられる。チベット数字との関係や書体に二通りある理由についても知りたかったが、それ以上の詳しいことにまでは言及されていない。 とにかく、モンゴル語は奥が深くて、まともに腰をすえてやろうと思うと学ぶべきことが多くてきりがないようだ。つくづく、モンゴル語という言語を選んでよかったと思う。

『蒙古遊牧記』

先日、神田の古書店で『蒙古遊牧記』という全十六巻(六冊本)を格安で入手した。しかも線装本である。帰宅してから調べてみると、かつて出版された影印本でもかなり値がはるという希少書のようだ。私のような個人が所蔵するにはいささか気が引ける。 ちなみに、学習院大学図書館の和漢籍蔵書目録データベースで調べてみたところ、同図書館には『蒙古遊牧記』を含む『皇朝藩属与地叢書』の全六集が収蔵されている。 この他にも同データベースでモンゴル関係の和漢書を検索してみたが、賽尚阿『蒙文晰義』という書物の存在がひときわ目を引いた。清代に著されたモンゴル語の規範書のようだ。機会があったらぜひ閲覧しに行ってみたい。

モンゴル語教育の歴史

中国のサイトに、元朝から現代までにおけるモンゴル語教育の歴史を概観した記事があった。今眠いので後でまとめることにして、とりあえずURLだけメモ。 http://www.alswh.com/Article_Show.asp?ArticleID=1237

モンゴル語研究論文リスト(2)

『言語研究』第51~128号に掲載されたモンゴル語関係の論文 小沢重男, 「On the ‘Qahan’ 中合罕 in the Language of the Secret History」, 『言語研究』(第53号)P91, 1968. 江実, 「満州語,蒙古語,チャガタイ・チュルク語(回語)の語彙相関々係について――五体清文鑑を基礎にして」, 『言語研究』(第54号)P49, 1969. 村山七郎, 「小沢重男:『古代日本語と中世モンゴル語――その若干の単語の――比較研究―付 元朝秘史モンゴル語語彙索引(抄)」, 『言語研究』(第55号)P78, 1969. 栗林均, 「蒙古語史における「*<i>i</i> の折れ」の問題点」, 『言語研究』(第82号)P29, 1982. 栗林均, 「蒙古語における*uγaと*ügeの母音縮合」, 『言語研究』(第85号)P22, 1984. 一ノ瀬恵, 「モンゴル語の「擬形語」について」, 『言語研究』(第99号)P121, 1991. 斎藤純男, 「『元朝秘史』で「廷」によって表された中期モンゴル語の音節について」, 『言語研究』(第101号)P1, 1992. 橋本邦彦, 「過去時の領域――モンゴル語の過去形接尾辞の意味について――」, 『言語研究』(第104号)P1, 1993. Tomoyuki KUBO, 「<i>Reduplication Meduplication</i> in Khalkha Mongolian」, 『言語研究』(第112号)P66, 1997. 栗林均, 「『元朝秘史』と『華夷訳語』における与位格接尾辞の書き分け規則について」, […]

モンゴル語研究の拠点

早稲田大学モンゴル研究所東京外国語大学アジア・アフリカ研究所東京外国語大学モンゴル語学科大阪外国語大学モンゴル語学科 モンゴル国科学アカデミーモンゴル国国立大学モンゴル国教育大学国際モンゴル学協会(IMAS) 内蒙古大学内蒙古師範大学 中国社会科学院中国内蒙古社会科学院 蒙蔵委員会

国内モンゴル語研究最前線(1)

日本は戦前からモンゴル研究が進んでおり、ロシアや中国、モンゴル国、ドイツなどと並んで世界のトップ水準にあるといってよい。近年においても、国内の各大学、研究所が活発な研究活動を続けている。 特に、現在日本国内で進められている、モンゴル語古文書を対象とする研究プロジェクトとしては、主に以下のものが挙げられる。それぞれのプロジェクトの詳細は、取材調査を行って少しずつ掲載していく予定だ。 ・「オロンスム文書の研究」(2004年からの4年計画, 東外大AA研ほか)・「白樺樹皮文書類の研究」(2004年に横浜ユーラシア文化館にて公開, 早大モンゴル研究所)・「ハラホト文書の研究」(2001年~, 早大モンゴル研究所)・「ビチェース・プロジェクト(突厥・ウイグル・モンゴル帝国時代の碑文および遺蹟に関する歴史学・文献学的調査)」(1996年からの3年計画, 阪大・モンゴル科学アカデミー)・「St. ペテルブルグ文書研究」(2003年からの5年計画, 東洋文庫研究部)

明治時代のモンゴル語教科書

早稲田大学図書館の蔵書のうち、明治時代以前のものはマイクロフィッシュ化されており、オリジナルを損傷しないで済むよう、通常の閲覧はこのマイクロフィッシュが用いられている。 去年の秋頃、何か面白い資料はないかと漁っていたところ、明治時代に出版されたモンゴル語の教科書を見つけた。ひとつは三巻本のモンゴル語読本で、奥付を見ると明治四十年発行となっている。もうひとつは日本語・中国語・モンゴル語対照の会話集で、日本の参謀本部による「諸言」が付されており、明治四十三年とある。いずれも縦書きの蒙古文字で書かれたものだ。 読本の方は「喀喇沁王府」とあって、会話集の方は「東部蒙古科爾心博王府ニ聘セラレ其ノ旗学堂教習ノ任ニ在ル数年頃目斯書ヲ編シ」とあるので、それぞれ当時の東部モンゴル(現在は中国内モンゴル東北地方)に分布するハルチン方言とホルチン方言を反映したものと考えられる。特に、会話集の方は蒙古文字の右脇にカタカナでルビが振られており、当時のホルチン方言の発音を推測する上での参考にもなる。 いずれにしてもこれらは、清朝末期のモンゴル語の概要を知るための資料として、非常に貴重なものであることは間違いない。マイクロフィッシュ化された資料は申請すれば有料でコピーさせてもらえるため、やや割高だが一部をコピーして持ち帰った(うろ覚えだが、たしか一枚につき50円)。 著作権などの関係で、一度にコピーできるのは、一冊につきマイクロフィッシュに撮影された全コマ数(裏表紙などの文字の書かれていないコマなども含む)の半分以内に限られるそうだ。果たして、同一人物が別の日に訪れて残りの半分をコピーしても違法なのか、あるいは誰か別の人としめし合わせて、各人が半分ずつコピーしたらどうかしらなどと、ついくだらないことを考えてしまった。 ��参考文献>喀喇沁王府, 『蒙文読本巻一』, 大日本図書株式会社,1907(明治四十年).喀喇沁王府, 『蒙文読本巻ニ』, 大日本図書株式会社,1907(明治四十年).喀喇沁王府, 『蒙文読本巻三』, 大日本図書株式会社,1907(明治四十年).参謀本部(日本), 『日漢対照 蒙古会話』,清国駐在日本公使館(推定) , 1910(明治四十三年).

ブリヤート語(モンゴル語ブリヤート方言)

さるコミュニティにて、ブリヤート共和国の情報サイトが紹介されているのをみつけた。ロシア語、英語、ブリヤート語のページがある。 ブリヤート語なるものは、モンゴル語の三大方言の一つであり、ブリヤート方言とも呼ばれる。使われている文字は同じキリル文字であるが、正書法などには独自の体系を持っている。 ブリヤート語のページなどなかなか目にする機会がないし、珍しいのでメモしておこう。http://egov-buryatia.ru:8082/

モンゴル語研究執筆計画

これから書こうと予定していることが、だいぶ頭の中にたまってきた。書きたいテーマを思いついても、それを実際に書く段になるまでの間、ずっと覚えているというのは骨だ。後で本当に書くかどうかは別として、とりあえず現在頭の中にあるものをメモしておこう。 旧「いたこのたわごと」からのモンゴル語の辞書(8)~(27)までの記事を「モンゴル語の穴ぐら」に引越し。[5/24 済] モンゴル語の専門用語辞典、用語集の蔵書(推定20~30冊)のスキャン画像取り込み。ISBNなどの書籍情報のまとめ。 近代のモンゴル語辞書に関して記事をまとめる。 『ホホ・ソダル』の各章について、『青史演義』を参考に内容の要約を作成。[作成中] 『言語研究』の第51号以降に掲載されたモンゴル語研究論文をリストアップ。[5/29 済] 「モンゴル語音韻対応表」の改訂版(作成済み)をアップ。[済] 「モンゴル語の空間表現」の要約をアップ。[済] 「モンゴル語コーパス」に関する情報をまとめる。 モンゴル語Web表示のための「外部フォント・ファイル」の記事について続きを書く。 モンゴル語のユニコード表示に関する記事 [執筆中] 「モンゴル語速報」に今年の日本モンゴル学会とモンゴルの国際学会などの日程案内を載せる。[済] 「モンゴル語速報」でモンゴル人研究者によるモンゴル語PC処理の開発について紹介。 「モンゴル語速報」で国内の研究者によるモンゴル語辞書電子化について紹介。 この他にも、「モンゴル語年表」のページを引越しさせたいのだが、テーブルタグのせいかスタイルシートが崩れてうまく表示させることができない。これはプログではなくホームページスペースを利用するなどした方がよいのかもしれない。当面の間、現在の「いたこのたこつぼ」のページにリンクを貼っておいてしのぐことにしよう。 あー、全部メモしたらすっきりした。。。

書評(1)

最近出版された、宮紀子著の『モンゴル時代の出版文化』(名古屋大学出版会, 2006. 1)を読んでみた。 従来の通説では、元の時代は少数の庶民的・通俗的な書物が刊行されたのみで、出版文化は盛んではなかったと考えられてきたが、むしろそれを裏返すような事実が続々と挙げられている。筆者の考証学、文献学的な素養に裏付けられた、斬新な視点での時代分析には感嘆させられる。史料としての価値だけでなく、モンゴル語研究を進める上でも参考になる点が多い。 これだけ内容の濃い本を読んだのは久々である。ちょっと値ははるが、情報量を考えると十分モトが取れる本だと思う。